中国株の2025年7月31日終値~8月29日終値までの騰落率は、上海総合指数が+8.0%、香港ハンセン指数が+1.2%と上昇基調が続いています。

上海総合指数:約10年ぶりの高水準

特に上海総合指数はここにきて大きな伸びとなり、ほぼ10年ぶりの高水準となっています。2024年に中国の景気対策期待で一時急騰した時の高値を超えて、2015年(中国株バブルが発生し、夏に崩壊)以来の高値となっています。

この上昇にはいくつかの背景があります。まず、米中関税問題がとりあえず落ち着いてきており、これに対して中国政府が景気刺激策を打ち出していることへの期待。

次に今後、米国が利下げをする見通しとなっていることから、人民元が上昇するのではないかとの観測が出ており(実際、緩やかに人民元は対ドルで緩やかに上昇)、海外からの人民元資産への投資資金流入があるのではないかとの期待。

そして、これらの期待からしばらく株式市場から遠ざかっていた中国本土の個人投資家が資金を投じていることがあります。実際のところ、中国の商業銀行はクレジットカードで調達した資金で株式投資を行う顧客への監視を強化しています。8月28日の中国政府系の証券日報でもクレジットカードによる資金調達は高コストであり、株式投資に廻すのはリスクが高いと警告しています。

香港ハンセン指数:強い上昇トレンドを意味する「パーフェクトオーダー」の並び

一方、8月の香港ハンセン指数の上昇度合いは中国本土株に比べれば緩やかでしたが、それでも株価は上昇トレンドが続いています。日足ベースでは50日移動平均線、100日移動平均線、200日移動平均線がいずれも上向きであり、上から順に株価、50日移動平均線、100日移動平均線、200日移動平均線の順に並んでいるパーフェクトオーダーと言われる順番(強い上昇トレンドを意味する)となっています。

香港独自の材料で上昇しているというよりは、中国本土株や米国株・日本株が高値を更新しているような状況で、外部環境が要因となっている側面はあります。とはいえ中国本土株は一段の上昇も期待できる位置にあり、そうなれば香港株も一段の上昇が期待できるでしょう。

中国の半導体国産化は注目テーマ

中国本土株は大幅上昇となっていますが、その割に中国の経済指標は低調です。例えば、8月の中国国家製造業景況感指数は49.4と、7月の49.3よりはわずかに改善しているものの、景況感の境目である50を下回っており、市場予想の49.5も下回りました。しかし、このような経済統計の下振れが、中国当局による追加刺激策の憶測を呼んでいます。

そして、その動きの中で見逃せないのが、中国当局がエヌビディア[NVDA]の中国向け仕様のAIチップ「H20」の使用を避けるよう要請し、これによって半導体の国産化が加速するとの見方が出ていることです。このニュースが出たころから本土市場で国産AI向け半導体製造への期待が高まり、関連銘柄が上昇し、商いを伴った相場上昇に繋がってきました。その後、エヌビディアの「H20」生産停止観測が伝わると、中国本土のAI半導体の中科寒武紀科技(688256)などが急騰しました。

香港市場でも本土のAI半導体企業の製造を請け負うファウンドリー大手の中芯国際集成電路製造 (00981)や華虹半導体(01347)の株価が急伸しています。さらにディープシークが最新AIをリリースしたニュースも重なり、半導体やAI関連が両市場で上昇し、相場を勢い付かせています。

中国の半導体の国産化については、興味深いテーマだと思います。AI向けの半導体だけでなく、EVなど車載向け半導体でも国産化が進んでいます。例えば、新興EV企業の小鵬汽車(09868)は自社で「図霊(チューリング)」というAIチップを開発し、自動車だけでなく、新事業の「空飛ぶクルマ」やAIロボット「IRON(鉄人)」にも搭載される見通しで、注目が集まっています。

EVとAI、これら2つの重要な分野で中国の半導体国産化が進むとすれば、息の長い相場材料となりえます。米国の対中半導体規制がかえって中国の国産化を早める動きとなっており、景気刺激策の一貫としても政策が打ち出しやすいことから、関連銘柄の今後のパフォーマンスに注目できると思います。