上海総合指数、香港ハンセン指数ともに回復

中国株の2025年3月31日終値~5月12日終値までの騰落率は、上海総合指数は+1.0%、香港ハンセン指数は+1.9%と回復しました。米国の関税問題から急落していた中国株ですが、米中交渉の進展に伴い株価も回復。上海総合指数・香港ハンセン指数は共に50日移動平均線を力強く上抜け、上昇基調が鮮明となってきています。

米中政府は5月10日~11日にスイスで閣僚会議を行い緊張緩和にこぎ着けました。共同声明によれば、90日間、米国は中国製品に課す関税を145%から30%に、中国は米国製品への関税率を10%にそれぞれ引き下げます。

中国の習近平国家主席はトランプ米大統領からの電話会談の呼びかけを拒否するなど、他国の指導者とは異なり強硬姿勢を貫いていましたが、結果として、米国側の譲歩を引き出す形となったと思われます。なお、トランプ米大統領は習主席と会談する可能性が高いことを示しており、さらなる米中融和が進む可能性もあります。

実際に企業業績への影響が出てくるのは秋以降

ともあれ、これらの発表を受けて株価は上昇を続ける可能性が高くなったところです。実体経済についても中国の多くの輸出企業は4月の米国への出荷を控えていたことから、今回の発表を受けて輸出が回復することになりそうです。

一方、厳しい見方をすると、本質的な貿易問題の課題解決はこれからが正念場とも言えます。今回は90日間の猶予ができ、米国側が譲歩した形になりましたが、英国と米国の貿易交渉の結果を見ても10%の関税が残り、0に戻ることはなさそうです。これは中国の企業業績や投資計画にマイナスの影響を与えます。実際に企業の業績に影響が出てくるのは秋以降の話であり、中国株が本格的な株価上昇トレンドに戻るかどうかは、その結果を見る必要があります。

中国株には業績がよく、株価が堅調な銘柄も多い

米国の関税問題の影響を最も受ける中国株は、相対的に株価が弱く推移しているのではないかとの懸念もあります。しかし関税の影響をあまり受けない企業も中国株には数多くあり、それら企業の株価や業績は堅調です。いくつか事例を見てみたいと思います。

テンセント(00700):AI含むハイテク産業は中国経済最大の成長分野

例えば、中国株では時価総額最大企業のテンセント(00700)の直近の業績を見ると、広告事業がAI技術によって収益、利益率とも大きく高まっています。同社は微信を中心とするユーザーベースが他社と比較して圧倒的に大きく、また動画、ゲームなどAIを直ちに活用できるサービスも多く、AIの効果や成果が出やすい企業です。もちろん、短期的にAIへの投資コスト拡大で利益増にブレーキがかかることがあるかもしれませんが、長期的にはテンセントのAI投資は報われる可能性が高いと考えます。

AIを含むハイテク産業は、今や不動産に変わって中国経済最大の成長分野となっています。全人代でもこのことが確認され、AIは重要議題として取り上げられ、民間主導で投資を進められる方針です。

BYD(01211):東南アジア、中南米、欧州市場で戦える期待感

EV中国最大手のBYD(01211)はほとんど米国へ自動車を輸出していません。むしろ、今回の米国の関税によって供給網の抜本的な見直しで自動車産業のコストが上昇するとすれば、価格競争力のある同社が進める東南アジア、中南米、欧州市場への輸出が有利になるかもしれない期待もあります。

中国はすでに何年も前から米国との貿易戦争の中で生き残りをかけて戦ってきたのであって、これから世界貿易戦争に入る日米欧企業よりも、備えや慣れがあると思います。

内需企業、資源企業にも注目

内需企業や資源企業にも業績良好な銘柄があります。たとえば12ヶ所の水源を持つミネラルウォーター最大手の農夫山泉(09633)。農夫山泉の包装飲用水の市場シェアは依然として第1位です。そして飲用水の減少を補ってあまりあるほど茶製品が大きく伸びており、市場トップの康師傅控股(00322)を抜かすような勢いです。

資源株では2028年までに主要金属鉱物製品の生産量で世界トップ3になることを目指す「新五カ年計画」を掲げる紫金鉱業(02899)(金、銅、亜鉛、リチウムの主要金属鉱物に焦点を当て、M&A、埋蔵量増加、生産量拡大に積極的に取り組む)や、中国三大石油企業の一角で川上(石油採掘)が主力で利益率が高く、コスト管理能力も高い中国海洋石油(00883)なども注目できると思います。