前工程の限界を打ち破る「半導体パッケージ」の重要性

半導体の性能が急速に向上する中で、後工程に当たる「半導体パッケージ」工程も進化し続けている。OpenAIが開発した生成AI(人工知能)のChatGPTが登場したのが2022年の秋。これを契機に、膨大な情報を短時間で処理するAIデータセンターが普及していることが背景にある。今後のフィジカル(物理)AIや自動運転の普及で半導体への要求が高まることが想定される。

従来のパッケージ工程:チップの「保護」と「配線」

半導体製造は従来、シリコンウエハ上に微細な回路パターンを形成し、そこからチップを切り出すまでの前工程が重要視されてきた。しかし、チップが完成してもそのまま使えるわけではない。機器などに組み込んで安定的にチップの機能を活用するためには、チップをパッケージの中に封止して利用する必要がある。

かつて、このパッケージの役割は

(1)チップを外部環境から保護する
(2)外部との電気的接続
(3)チップ動作時の放熱
(4)プリント基板への実装性向上

などだった。1枚のチップに蓋をして、配線するイメージだ。比較的単純な工程であり、従来は後工程全体が重要視されることはなかった。

ChatGPT以降:性能向上の「切り札」へ

しかしChatGPTの登場以降、エヌビディア[NVDA]の高性能半導体(GPU)「ブラックウェル」などが求められるようになり、その周囲にサムスンやSKハイニックスなどのHBM(広帯域メモリ)を隣接させるなど、パッケージ工程が高度化・複雑化している。先の役割に加えて、

(1)微細化(前工程)以外の性能向上手段の実現
(2)異なる回路集積(ロジック・メモリ)の推進
(3)省電力化・高性能化

などが加わってきている。

これまで半導体は前工程での半導体線幅の微細化で性能を上げてきたが、それだけでは限界に達しつつあり、また、コストも上昇してきている。そこで後工程のパッケージ工程で性能をさらに上げることが必要になってきている。チップの微細化事情とは直接関係しない、パッケージ技術にチップの性能向上を担う役割が期待されているわけだ。

「半導体パッケージ工程」技術の進化:2.5Dから「3Dパッケージ」へ

パッケージは線でつなぐ「ワイヤーボンディング」という技術から始まり、パッケージの底面にボール状のはんだを並べて、実装密度を高めるBGA(ボールグリッドアレイ)へと進化。さらに、チップをプリント基板に直接接続するFC(フリップチップ)ーBGAが主流となった。

現在では複数のチップを一つのインターポーザ(中間台座)状に搭載し、一つのパッケージに収めた「2.5Dパッケージ」が実用化されてきている。チップ間の距離が短く、信号処理のロスを少なくできることで、情報伝達を高速化できる。

今後有望視されるのは3Dパッケージだ。これは複数のチップを垂直方向に積層して一体化する最先端の実装技術。積層チップ間を直接接続するため、チップ間の距離がほぼゼロであり、信号遅延や消費電力の低減に貢献する。また、平面上の専有面積を大幅に削減できることで、高密度化にも有効となる。

AIデータセンター需要を取り込む「半導体パッケージ」関連銘柄

イビデン(4062)

半導体パッケージ基板の世界大手。インテル[INTC]のCPU(中央演算処理装置)、エヌビディアのGPU(画像処理半導体)向けのICパッケージが軸。2026年2月、2028年度までの3年間で、総額5000億円規模の設備投資を実施すると発表している。高機能パッケージ基板(AIサーバー、高性能サーバー向け)の生産能力を増強する。河間事業場、大野事業場(いずれも岐阜県)など既存工場を増強、2027年度より順次稼働し、量産を開始する予定。

【図表1】イビデン(4062):週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2026年5月21日時点)

レゾナック・ホールディングス(4004)

半導体後工程素材で世界首位。半導体のサブストレート(基板材料)である銅張積層板のトップメーカー。銅張積層板に対し、配線板メーカーがドリル加工やメッキ加工を行うことで回路が形成され、その基板を半導体メーカーがパッケージとして組み立てることで完成する。

【図表2】レゾナック・ホールディングス(4004):週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2026年5月21日時点)

住友ベークライト(4203)

住友系の樹脂加工大手。半導体封止(パッケージ)材料で世界シェアトップ。半導体封止用エポキシ樹脂成形材料、半導体パッケージ基板材料などを手掛けている。2026年1月に京セラ(6971)から半導体封止材などの事業を買収。AIデータセンター用途などでプレゼンスを高めていくとしている。

【図表3】住友ベークライト(4203):週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2026年5月21日時点)

JCU(4975)

銅などのメッキ薬品大手。半導体パッケージ基板向け表面処理薬品を手掛けている。具体的にはビアフィリング薬品(パッケージ基板の層間を電気的に接続するため、ビア<孔>を銅めっきで充填する薬品)、エッチング(表面加工)薬品(半導体パッケージ基板材料の表面に形成された薄いシード層<銅>を化学反応によって剥がし、指定されたパターンの形にするための薬品)などを展開している。

【図表4】JCU(4975):週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)

メック(4971)

電子基板向けが中心の薬品企業。半導体パッケージ基板の銅表面処理剤では世界トップシェア。銅と樹脂との密着性を高める化学密着向上剤など技術力に定評。第1四半期時点で2026年12月期業績を上方修正。営業利益は11億円上乗せの76億円(前期比32%増益)となる見通し。AIデータセンター向けの半導体パッケージ基板用製品の需要が想定を上回っていることが要因。配当も増額。

【図表5】メック(4971):週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2026年5月21日時点)