モトリーフール米国本社– 2025年2月6日 投稿記事より
AIが医薬品業界に革命を起こす可能性
人工知能(AI)は2025年の重要な投資テーマであり、さまざまな業界を一変させています。複雑なワークフローを自動化し、生産性を高めるAIの能力は、次世代イノベーションを大きく変容させるとみられています。
恐らく、AIを活用する上で最も有望なのは、より有効性の高い治療を提供する医薬品の創薬プロセスを加速させ、医薬品に革命を起こす可能性です。幾つかのバイオテクノロジー企業は、新たな成長機会を切り開くため、こうした最先端技術を取り入れています。
本稿では、AIの力を活用してポートフォリオに大きく貢献する可能性のあるバイオテクノロジー株を3銘柄紹介します。
1. アッヴィ [ABBV]
アッヴィはバイオ医薬品でトップクラスの企業です。免疫疾患に重点を置き、がんと神経科学領域にも範囲を拡大するなど、同社の製品ポートフォリオは複数の治療分野にまたがっています。
2024年第4四半期の予想を上回る好決算を受けて、株価は急騰しました。自己免疫疾患治療薬のブロックバスター(画期的な大型新薬)である「スキリージ」と「リンヴォック」が好調に売上げを伸ばし、業績を押し上げました。これらの2品目は、収益基盤である「ヒュミラ」の改良型後継品と見なされています。経営陣は、経営および財務面の勢いが続くと予想しており、2025年の調整後1株当たり利益(EPS)の目標を12ドル12セント~12ドル32セントとしています。その中央値で見ると、2024年の実績を21%上回り、堅調に利益が伸びることを示しています。
アッヴイのAI戦略を巡っては、楽観的な見方が広がっています。同社の分析プラットフォームであるアッヴイ・リサーチ・アンド・デベロップメント・コンバージェンス・ハブ(ARCH)はその中心にあり、幅広い新薬候補パイプラインとつながっています。ARCHは、研究者による膨大なデータの検索、AIによる創薬の推進、最適な薬剤の設計を可能にします。研究・開発プロセスにAIと機械学習を組み込むことにより、同社は新薬開発期間を従来の10~15年から半分に短縮することを目指しています。
結論として、アッヴイは、長期的に株主に報いるのに必要な全ての要素を備えているように思われます。
2. ギリアド・サイエンシズ [GILD]
ギリアド・サイエンシズの株価は本稿執筆時点までの過去1年間に26%上昇し、約10年ぶりの高値水準にあります。バイオテクノロジーの巨人とも評される同社は、抗ウイルス薬で知られ、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症、およびC型肝炎治療薬で市場をリードする一方、がん領域などへの多角化も大きく進展しています。
同社の2024年第3四半期決算は、製品ポートフォリオ全体にわたる旺盛な需要を背景に、市場の予想を上回りました。経営陣は通期売上高と目標EPSを引き上げ、自信を示しました。その理由として、衰弱性肝疾患である原発性胆汁性胆管炎(PBC)治療薬である「レブデルジ」が、市場をけん引している点を挙げました。
ギリアド・サイエンシズの2025年見通しは強気です。複数の後期臨床試験データが発表される予定です。1月にはギリアド・サイエンシズは、情報・通信システムを総合的に手掛けるコグニザント・テクノロジー・ソリューションズ[CTSH]との提携を拡大し、企業としての効率性を強化する目的でカスタム生成AIの開発に取り組みました。
また、これとは別の未上場バイオ企業テライ・セラピューティクスとの提携は、テライのAIによる「tNova創薬プラットフォーム」を活用するものです。ギリアド・サイエンシズは、このプログラムを通じて開発される潜在的な製品について、商業化に向けた独占権を確保しています。
こうした取り組みによって、ギリアド・サイエンシズは急速に進化するバイオテクノロジー業界にあって、競争力を維持できる立場にあります。イノベーションを持続する同社の能力を見れば、節目の年となる可能性がある2025年、魅力的な銘柄であると考えられます。
3. モデルナ [MRNA]
2025年の年明けにかけて、アッヴイやギリアド・サインシズの株価は好調なパフォーマンスを示しましたが、モデルナはこれとは対照的な状況にあります。
モデルナは新型コロナウイルスに対するメッセンジャー(m)RNAワクチンの開発において、先駆的な役割を果たしたことで知られていますが、ワクチンの予防接種需要の減少を乗り切るのに苦戦しています。モデルナが新たな大ヒット薬を生み出せるのかについて、市場が懸念を抱いたことから、株価は本稿執筆時点までの過去1年間に64%の下落という残念な状況になっています。しかし、このような急落は投資家に対し、敗者となった業界トップ企業の絶好の買い場を提供することがあり、モデルナがあてはまる可能性があります。
モデルナはノロウイルスや、免疫が低下した患者に重篤な影響があるサイトメガロウイルス(CMV)に対する新たなワクチンなど、注目すべき医療面の対応を進めています。1月にはH5N1型鳥インフルエンザワクチンの後期開発過程を完了させる目的で、米連邦政府から5億9,000万ドルの助成金を受けました。
モデルナは3年以内に、10新薬の承認を取得するという野心的な目標を掲げています。そこではAIが中核的な役割を果たします。モデルナは包括的なデジタル・プラットフォームとクラウドを活用するインフラを構築中です。オープンAIやIBM[IBM]といったハイテク・リーダー企業との協働により、バリューチェーン全体にわたってAIを統合し、mRNA技術を広めようとしています。
モデルナには成長軌道に戻ると考える投資家にとって、現在の株価は長期に保有する場合、割安に見えるかもしれません
免責事項と開示事項 記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。元記事の筆者Dan Victor は記載されているどの銘柄の株式も保有していません。モトリーフール米国本社はアッヴイとギリアド・サイエンシズの株式を保有し、推奨しています。モトリーフール米国本社は情報開示方針を定めています。