2025年2月5日(水)8:30発表
日本 毎月勤労統計調査2024年12月速報
【1】結果:冬のボーナスが寄与し実質賃金は2ヶ月連続でプラス圏

2024年12月の名目賃金は、前年同月比4.8%増と市場予想を大きく上回る結果となりました(図表1)。ボーナスにあたる特別に支払われた給与が上昇に寄与し、前月11月からも伸びが加速しています。また、基本給にあたる所定内給与の前年同月比2%後半の横ばい圏で推移しており、2024年通年では前年比2.1%増と、1994年以来となる2%以上の伸びとなりました。

実質賃金は、足元では物価も上昇傾向にあることから下押し圧力となっていたものの、2ヶ月連続となるプラス圏で推移しています(前回11月分は、確報値により前年同月比0.5%増に修正)。今回12月の内容は市場予想では再びマイナスとなることが予想される中で、プラス圏での着地となりました(図表2)。
2024年通年での実質賃金は前年比0.2%減となり、3年連続でのマイナス推移となりました。一方でマイナス幅は2023年の前年比2.5%減から縮小しています。

ボーナスにあたる特別現金収入は、前年同月比6.8%増と大きく上昇が見られました。実際の金額ベースでは、全体で33万3,918円と2006年12月以来の高水準となりました(図表3)。
【2】内容・注目点:先行きでは再び実質マイナスの公算が高い

ボーナスの効果が色濃く出たものの、実質所定内給与はマイナス幅を拡大しています(図表4)。足元では変動品目の大きい生鮮食品やコメの物価上昇による全体の押し上げがインフレを加速させており、次月以降ボーナスの効果が剥落した際には、実施賃金は再びマイナスでの推移が予想されます。前述の通り、2024年の所定内給与は、過去に見ない伸びとなり賃上げ基調自体は堅調と言えるでしょう。
先行きの物価見通しは日銀・市場ともに上方修正がされており、当面の実質賃金はマイナスでの推移が予想されますが、ポジティブな材料は今年の春闘も去年と同程度の5%以上の賃上げを要求していることで、所定内給与も上昇基調が続くものと考えられるでしょう。
【3】所感:春闘結果を見ていくフェーズ、中小企業により注目
指数から見える賃金の基調はヒストリカルに見てもしっかりとしたもので、保守的な見方をすれば、より大きな伸びは考えづらいと感じています。更なる賃上げの伸びが拡大する要因は、やはり中小企業でもしっかりとしたベースアップ等の実施となりますが、言うは易しで簡単なものではないでしょう。連合の春闘での要求は、中小企業は6%以上の賃上げを要求するとされており、ひとまずはこの水準をどの程度達成できるかがポイントとなりそうです。
実質賃金がプラスとなる観点では、物価が2%のターゲットに収斂することに期待したいものの、食品類について言えば、気候や外部要因の影響が大きく政策等による作用が難しいもので(そもそも変動が激しい点も含め)、当面は消費マインドにも下押し圧力がかかるものと推察されます。
マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 山口 慧太