先週の中国株ですが、上海総合指数、深セン総合指数、創業版指数は揃って上昇、香港ハンセン指数は反落となりました。1月23日(木)の午前中に発表されたHSBC中国製造業PMIの1月速報値が半年ぶりに景況感の境目である50を割り込み中国経済に関する失速懸念が世界中で拡がり、さすがにこの日は上海総合指数も小幅の下落となりました。しかし、深セン総合指数、創業版指数はこの日も上昇を続けています。先週指摘したように中国の経済改革によって恩恵を受けられるのは実力のある民営企業や新興企業であるため、新興企業への買い意欲が強く、深セン総合指数と創業版指数を引き上げる要因となっています。そして、翌日の1月24日(金)は世界的に株価が下落する中で上海総合指数、深セン総合指数、創業版指数はそろって上昇となっています。

 世界的に株価が下落する中で中国株が堅調な理由はもう1つあります。それは中国人民銀行(中央銀行)が大手銀行に短期資金を供給し、ここのところ懸念されていた流動性に対する懸念が払拭されたことです。中国人民銀行が資金を供給した背景には旧正月前の資金需要拡大による資金逼迫を緩和する狙いもありますが、山西省の山西振富能源集団という石炭会社に投資していた約30億元の理財商品(いわゆるシャドーバンキング)が、シャドーバンキング初のデフォルトになるのではないかとの懸念が出ており、短期金融市場が緊張していたことがあります。ともあれ、この資金供給により短期金利は落ち着き、株価にはプラス材料となりました。

 一方、香港ハンセン指数は24日(金)に大幅続落となり、週間でもマイナスとなりました。こちらはアルゼンチンが下落する自国通貨を買い支えられないことを発表し、アルゼンチンペソが急落した流れで新興国の通貨、株価が全般的に下落した流れを受け継いだものです。個別で見ても、年初来で大きく騰がっていたネット株、ソーラー及びシェールガス関連の一角が大きく値を崩しています。今週の注目はなんといっても2014年1月28日~29日に行われる米国のFOMC(連邦公開市場委員会)です。今回はアルゼンチンのペソ安の急落がキッカケとなり経常赤字の新興国へその危機が波及した形ですが、その根本的な原因は米国の量的緩和策です。これまで米国の量的緩和政策によって発生した投資マネーが新興国に流入して経済や株価などを支えてきました。しかし、その量的緩和が縮小されることになったので新興国から資金が引き揚げられていることが今回のペソ急落の背景です。仮に今回の危機を救うために量的緩和政策の縮小を一旦ストップするといったようなことが発表されれば、短期的に株価は大きく反発する可能性があります。

コラム執筆:戸松信博