金融緩和、融資枠設定、景気へのテコ入れを始めた中国政府

中国が景気のテコ入れに大きく舵を切っています。そこで今回は中国関連株に目を向けてみようと思います。

中国での景気対策の第1弾は2024年9月24日でした。この日、中国人民銀行の潘功勝総裁は記者会見の席上で、「7日物短期金利を引き下げる」と発言しました。金融当局のトップが事前に金融緩和を予告するのはきわめて異例です。

続いて9月26日には、中央政治局会議において財政出動の必要性が強調されました。

9月27日にはさっそく人民銀行が7日物短期金利と預金準備率を同時に引き下げました。事実上の金利緩和への転換です。

10月1日~7日まで中国は国慶節の連休でした。その連休が明けて間もない10月12日、藍仏安財政相は、国債の発行による大手国有銀行への資本注入と、地方政府が抱える「隠れ債務」の借り換え方針を明らかにしました。

さらに10月18日には株式市場のテコ入れ策として、上場企業の自社株買いに使途を限定した3000億元(6.3兆円)の融資枠の設定を発表しました。

また、10月21日には最優遇貸出金利の0.25%引き下げにも踏み切りました。年内には預金準備率の0.5%の引き下げが予想されており、2025年も一段と金融緩和に踏み込むとの予想が市場には増えています。

10月18日に国家統計局から発表された7-9月期の実質GDP成長率は+4.6%まで低下し、4-6月の+4.7%からさらに減速したことを示しました。今年の政府目標である「5%前後」を大きく下回っています。

このままでは政府目標の未達という何としても避けたい状況を突きつけられる可能性があります。それが中国政府を景気のテコ入れ策に走らせているとみることもできます。

いよいよ財政出動を伴う不良債権処理に踏み込むのか、それともあくまで金融緩和だけの措置にとどまるのか。マーケットは習近平体制が取りうる市場への踏み込み方を見届ける格好の機会と見ています。

金融・財政措置によって中国経済が久々に浮上できるのか。中国関連株を以下に紹介します。

中国経済の動向と合わせて注目したい4銘柄

安川電機(6506):世界トップシェアのメカトロニクスメーカー

世界トップシェアを持つACサーボモータを主軸としたメカトロニクスメーカー。主要製品はほかにもインバータ、産業用ロボットと幅広い。工場の生産ラインを「セル」という1単位でとらえ、「セル」を丸ごと産業用ロボット、サーボモータ、インバータで自動化することを得意とする。競争力の高さから代表的なグローバル企業で、海外売上比率は72%に達する。うち中国は22%を占め、中国の需要回復が収益拡大のカギを握る。

【図表1】安川電機(6506):週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2024年10月24日時点)

サイゼリヤ(7581):アジアでの出店を強化する低価格イタリアン

首都圏を中心に低価格のイタリア料理とワインを提供するレストラン「サイゼリヤ」を展開。オーストラリアに製造子会社を持ち、近年はアジアでの出店を強化している。アジアの中でも中心は中国、台湾、香港、シンガポール。2024年8月末の店舗数は1,569店で、国内1,038店、海外531店となっている。そのうち上海164店、広州186店、北京65店、香港62店、台湾21店に達する。店舗数の伸びは海外の方が大きい。

【図表2】サイゼリヤ(7581):週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2024年10月24日時点)

トリドールホールディングス(3397):インバウンド客にも人気の「丸亀製麺」などを運営

低単価セルフうどん「丸亀製麺」を全国で展開。最近ではハワイアンカフェ「コナズ珈琲」、かつ丼・トンテキ専門店「豚屋とん一」なども手がける。インバウンド外国人に人気の手作り、できたてのうどん、天ぷらのニーズの高さから海外展開に注力。2024年3月末の時点で28か国、1,979店を展開(うち国内1,110店、海外869店)。香港は189店だが中国本土は26店にとどまる。中国本土は消費低迷の影響が大きいが、それもいずれは解消する見込みで、中国ビジネスに再びトライする好機が巡ってきた。

【図表3】トリドールホールディングス(3397):週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2024年10月24日時点)

ヨネックス(7906):バドミントン熱高まる中国で売上げ急増

スポーツ用品メーカー大手。バドミントン、テニス、ゴルフが3本柱で、中でもバドミントンは世界トップシェアを持つ。日本・北米・ヨーロッパ・アジアの4極の販売体制を敷くグローバル企業。種目ではバドミントン用品が売上の62%を占め、テニスが15%、ゴルフが2%。バドミントンは伝統的にインドネシア、マレーシア、日本というアジア各国が世界トップレベルの実力を持っており、そこに2021年の東京五輪以後、中国勢の躍進が著しい。トップ選手の活躍によって中国でもバドミントン熱が高まっており、それに伴って用具の売上げも急増している。新たな躍進の時期を迎えている。

【図表4】ヨネックス(7906):週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2024年10月24日時点)