かつて「ドリーム・チーム」と言われ、ノーベル賞受賞者2名を擁した、伝説のトレーダー、ジョン・メリウェザー率いるヘッジ・ファンド「LTCM」が、ロシア危機などを契機に大損失し、欧米の金融機関から36億ドルの緊急出資を受けたのは昨年の夏のことでした。
かつてソロモン・ブラザーズにいた頃、彼らの教育を受け、彼らのために働いたことのある私にとって、それは衝撃的な、そしてある意味でノスタルジックな出来事でした。「ひとつの時代が終わった」と。
しかし今日の日経新聞によると、その36億ドルのうち7割強を既に返済し、近く6億ドル強も返し、それで9割を返済すれば新規資金の導入を認めるという条件を満たし、新たなファンド「JWMパートナーズ」を近々設立するということです。いやはや、あっぱれとしか言いようがありません。しっかりと借りを返し、そしてまたあくなき挑戦に挑む。私にとっての先生でありヒーローであったJMとその仲間たちは、やはり私にとっては永遠のヒーローです。たとえ今回のファンドで失敗することがあっても。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。