先週の上海総合指数は続伸となりましたが、深セン総合指数、創業版指数、香港ハンセン指数は反落となっています。特に創業版指数は厳しい下げに見舞われています。これは先週末に中国本土市場で新規株式公開(IPO)が再開する方針が発表されたためです。中国本土市場では13ヶ月に渡り、IPOを停止してきましたが、今回IPOが再開されたことは中国の改革の一環です。これまでIPOには中国当局の承認が必要だったわけですが、今後、中国当局は適切な情報開示などディスクロージャー面の整備に注力し、上場の可否に関しては市場の需給状況に任せ、市場原理を導入する方針を発表打ち出しています。もちろん、これは長期的に中国の株式市場にとってプラスですが、短期的には需給悪化を招きます。現在上場を待っている企業は約800社近くに登っており、その約4分の3は中小企業であるため、特に創業版指数の需給悪化につながります。
上海総合指数が上昇したのは前述のように小型株が大きく売り込まれたことによります。IPO再開のニュースにより、これまで大きく上昇してきた小型株を利食い、割安になっている大型優良株を買う資金循環が効いています。ちなみに中国経済全体のニュースとしては、PMIの発表があります。11月の中国公式製造業景況指数(PMI)は51.4で10月から横ばい(但しアナリスト予想の51.0は上回る)。同じく11月の中国公式非製造業景況指数(PMI)は56.0となり、10月の56.3から低下しています。また、11月のHSBC中国製造業PMI確報値が発表され速報値の50.4から50.8に上方修正されました。株価にはプラスであったものの、まちまちの結果であったため影響は限定的でした。
その他で大きなニュースとしては第4世代(4G)移動通信の事業免許交付があります。中国工業情報省は「TD-LTE」による第4世代(4G)移動通信の事業免許を中国移動(00941)、中国電信(00728)、中国聨通(00762)の3社に交付しました。しかし、免許交付は規定路線であったため、逆にこれまで買われていたことから利食い売りが入るような状況となっています。今週は10日に鉱工業生産、小売売上高、マネーサプライなどの経済指標の発表があり、その動向を睨みながらの相場展開となるでしょう。
コラム執筆:戸松信博