モトリーフール米国本社、2024年10月1日 投稿記事より

半導体株にとって厳しい夏だったが、長期的トレンドは消えていない

過去10年間に市場で最も高いパフォーマンスを上げているセクターは、半導体セクターです。しかし、そのボラティリティの高さから、多くの投資家は半導体株への投資に尻込みしています。

5年を超える長期視点の投資家であれば、半導体株に投資しないことは大きなリターンを逃すことになりかねません。結局のところ、人々が使うあらゆるデバイスには年々多くのチップが搭載され、しかもそれは人工知能(AI)革命によってますます増加すると思われます。

その上、今は半導体セクターに投資する絶好のタイミングかもしれません。

理由1:半導体銘柄の株価は第3四半期に下落しているが、懸念が現実化しない可能性もある

第3四半期の株式市場は全体的に緩やかに上昇しましたが、半導体株は違いました。半導体セクターの上位26銘柄に連動するように設計された上場投資信託(ETF)のヴァンエック半導体ETF[SMH]は、第3四半期に5.4%下落し、7月中旬に付けた過去最高値からは11.5%も下落しています。

この下落にはいくつかの理由があり、それらが重なった結果、低パフォーマンスとなりました。しかし、それぞれの理由を見ると、長期的な展望に悪影響を及ぼすほど深刻なものはなさそうです。

半導体株は2024年の年初に大きく上昇しました。この上昇の背景にあるのは、SMH最大の組み入れ銘柄であるエヌビディア[NVDA]の上半期における急騰です。そのため、いずれ下落や調整があることは予想されており、投資家は利益確定の口実を探していたのでしょう。

その口実が現れたのが7月で、軟調な雇用統計をきっかけに景気後退をめぐる懸念が高まりました。また、AIブームに対する懐疑派は、大手クラウドインフラ企業の決算を受け、これらの企業による半導体への多額の設備投資を正当化するには、売上高と利益の伸びが不十分であると指摘し、半導体株の売却に動きました。

一方で、PC、スマートフォン、電気自動車(EV)など、AI以外の半導体支出は、引き続き低迷しています。これらのエンドマーケットはいずれも、企業のAI支出に圧迫されるか、あるいは金利上昇によって、消費者の買い控えに直面しています。

とはいえ、第3四半期末には米国の経済指標は改善しています。雇用の伸びは7月の低迷から回復し、インフレ率は米連邦準備制度理事会(FRB)が目標とする2%に向けて低下しています。FRBは9月18日にフェデラル・ファンド(FF)金利を50bp引き下げました。これは、一部の予想を上回る利下げ幅です。これにより、自動車などの高額商品に対する個人消費が再び活発になり、企業支出も負担が軽減されるはずです。

さらに、ほぼすべてのテクノロジー企業幹部は、AI構築がしばらく続くという強気の姿勢を崩していません。マグニフィセント・セブンの各社も、AI投資が増加すると予想し、既に生み出され始めているリターンが将来的に増加するとの見方を維持しています。9月上旬には、オラクル[ORCL]のラリー・エリソン会長がAI支出に関する悲観論を一蹴し、AI競争は資金力のある大手企業が「技術的優位性をめぐって繰り広げる闘い」であり、「永遠に続く競争である」と述べました。

理由2:マイクロン・テクノロジー[MU]の決算が懐疑派の見方を覆す

9月下旬に半導体メーカーのマイクロン・テクノロジー[MU]が発表した第4四半期(2024年6~8月期)決算は予想を大きく上回り、ガイダンスも予想を上回る内容でした。他の半導体銘柄と同様に、マイクロンの株価も6月に付けた過去最高値から50%近く下落していましたが、今回の決算発表を受けて急騰しており、夏にウォール街の一部アナリストが指摘した懸念は払拭されたと見られます。

マイクロンは、世界に3社しかない大手DRAM(ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ)メーカーの1社であり、DRAMはほぼすべての電子機器に搭載されています。そのため、マイクロンの見通しは、半導体市場の健全さを示す優れたバロメーターとなります。

マイクロンが手掛けるAIアプリケーション向けHBM(広帯域メモリ)製品は、AIデータセンター向けに極めて高い需要が続くことがほぼ確実とみられ、マイクロンも自社のHBMが2025年生産分まですべて受注済みであることを明らかにしています。同社の経営陣は、AI対応のPCやスマートフォンの成長がカタリストになり、2025年にはサーバー向け以外のDRAMの需要が増加するとの見方を示しています。

従って、長く続いたPCやスマートフォンの低迷も、2025年には力強く回復する可能性があります。2020~2021年のコロナ禍に購入されたデバイスが古くなり、新モデルにはAI対応機能が搭載されています。これは、半導体を多く搭載するデバイスの購入が増えることを意味し、半導体株にとっては好材料です。

そのため、マイクロンの経営陣は2025年について非常に楽観視しており、2025年の「売上高は過去最高を大幅に更新し」、利益率も劇的に改善すると予想しています。

理由3:中国の大規模刺激策

最後の理由として、中国は先週、大規模な景気刺激策を打ち出し、政策当局は追加の財政支援が控えていることも示唆しました。中国経済は半導体市場にとって重要であり、巨大な人口は世界の半導体の半分超を消費しています。繰り返しますが、中国だけで、世界の半導体の半分を超える量を消費しているのです。

最先端半導体の一部は中国での販売や使用が禁止されていますが、中国が抱える14億人の人口は、スマートフォン、PC、AI以外のサーバーといったさまざまな分野で多くの半導体を消費しています。さらに、中国はクリーンエネルギー市場も盛んで、世界の太陽光パネル生産量の80%を占めています。中国の7月の新車販売台数のうち、バッテリー駆動車またはハイブリッドEVに分類される新エネルギー車の割合は50.7%に達し、従来の内燃エンジン(ICE)車を初めて上回りました。EVやハイブリッド車はいずれも、従来の自動車よりも多くの半導体を必要とします。

コロナ禍以降、中国経済は本当に苦戦を強いられました。政府によるハイテク企業への締め付け、「ゼロコロナ政策」によるロックダウンの長期化、不動産バブルの崩壊が原因で、個人消費は大きく落ち込みました。しかし、それから3年が経ち、中国はようやく成長回復に本腰を入れ始めたようです。

これは、中国経済の低迷とそれに伴う過剰在庫の影響で、数年にわたって厳しい状況に直面していた半導体株にとって好材料です。状況が好転すれば、今後半導体市場が成長するきっかけとなるでしょう。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。元記事の筆者Billy Dubersteinと同氏の顧客はマイクロン・テクノロジーの株式を保有しています。モトリーフール米国本社は、エヌビディア、オラクルの株式を保有し、推奨しています。モトリーフールは情報開示方針を定めています。