先週(9月23日週)の動き:ニューヨーク金先物価格(NY金)5営業日連続で史上最高値を更新し初の2,700ドル台 国内金価格は一時的円安で高値圏に

NY金は史上最高値をさらに更新

先週のニューヨーク金先物価格(NY金)は、9月26日まで7営業日続伸し、その内5営業日連続で史上最高値を更新し初めて2,700ドル台に乗せることになった。26日のNY金の終値2,694.90ドル、取引時間中の高値2,708.70ドルはいずれも史上最高値となる。

9月27日は最高値圏で迎える週末に加え、月末、四半期末接近ということで、利益確定売りとともにファンドの持ち分(ポジション)調整の売りが膨らみ8営業日ぶりの反落となった。NY金の通常取引は前日比26.80ドル安の2,668.10ドルで終了した。それでも週足は21.90ドル、0.83%上昇と3週続伸となった。また、9月27日は先週注目指標とした8月の米個人消費支出(PCE)統計が発表され、変動の大きい食品とエネルギーを除くコア価格指数(PCEコアデフレーター)が前月比ベースで市場予想を下回る伸びにとどまった。消費支出の伸びもわずかで、景気の減速感が示唆された。 

その1週間前の9月20 日、ウォラー米連邦準備理事会(FRB)理事が、9月の連邦公開市場委員会(FOMC)にて0.5%利下げを支持したことについて、インフレの減速が想定以上に進んでいることを指摘し、PCEコアデフレーターが3ヶ月平均で1.8%未満とFRBの目標値2%を下回るのではないかとしていた。その発言を受け、次回11月FOMC会合での連続大幅利下げ期待が高まり、結局PCE統計発表の前日である9月26日、NY金は目先筋のファンドの買いに2,700ドル超まで駆け上がっていた。

週前半に発表された米コンファレンスボードの9月消費者信頼感指数が98.7と前月の105.6から低下し、低下幅が2021年8月以来最大となったこと。さらに米主要格付け会社ムーディーズが、次期政権下で財政収支改善の方向性が見えない場合には米国債格下げの可能性があると警告したこともNY金の買い手掛かりとなった。

さらに先週は、イスラエルとレバノンの親イラン民兵組織ヒズボラの対立が激化し、イスラエル軍がレバノンのヒズボラ拠点への空爆を激化させたことで、地政学リスクの高まりが意識されたことも押し上げ要因となった。

注目とした8月PCEコアデフレーターは、前月比0.1%上昇と市場予想の0.2%上昇を下回るとともに3ヶ月ぶりに低い伸びとなった。年率では2.7%上昇と予想と同じ水準(ダウ・ジョーンズ調べ)に。結果的には3ヶ月平均年率2.1%の上昇とウォラーFRB理事が懸念するほどには、インフレは軟化していなかった。ただし、インフレの鈍化が継続すれば、新たな政策金利の水準4.75~5.00%はかなり景気抑制的であり、確かに利下げ余地は拡大していると言える。

こうした中で先週のNY金のレンジは2,652.50~2,708.70ドルとなった。最高値更新を読み2,620~2,680ドルとした想定レンジを30ドルほど上回ることになった。これはCTA(商品投資顧問)と呼ばれる短期筋のファンドの買いが上振れにつながったことによるものと見ている。

国内金価格は一時的円安で高値に

一方、国内大阪取引所の金先物価格(JPX金)は、ドル円相場が円安に振れたことで、大きく水準を切り上げることになった。特に週末の東京時間午後に行われた自由民主党総裁選挙にて、日銀の利上げに批判的な高市氏が新総裁に選ばれるとの見方から、円は一時146円台半ばに下落。その後、決選投票を経て石破氏の勝利が伝わると巻き戻しの円買い・米ドル売りが活発になり一転142円台の水準に振れた。ちょうど、円安水準に振れた時間帯にJPX金の日中取引が終了したことで、9月27日の引値は7月19日以来の高値となる1万2,569円となった。

その結果、先週の国内金価格の週足は、前週末比657円、5.5%の大幅高とり、レンジは1万2038~1万2603円となった。先週1万2000~1万2400円とした予想レンジの上限を200円上回ったのは、米ドル円のノイズとも呼べる一時的な動きによる。なお、その後のNYの時間帯に円高傾向が続くとともにNY金が反落したことで、JPX金の週末夜間取引は1万2100円台まで水準を切り下げた。

米新年度「つなぎ予算案」可決だが将来波乱の可能性大

足元で発表される米経済指標とは別に、金市場では将来にわたる様々な懸念事項も買い手掛かりとして意識されているが、その一つに米国財政がある。

10月から始まる新年度に向けて9月25日に米下院は12月20日までを期間とする「つなぎ予算案」を可決、翌26日は上院も通過しバイデン大統領がサインし成立した。当初、共和党保守強硬派(フリーダムコーカス)が反対し、共和党内部で法案をまとめるのに時間を要したが、大統領選挙が近いことから混乱を避けるために、成立に至った。

例年、「つなぎ予算」が常態化しており予算が確定するのは年明けの2月頃とみられる。11月の大統領選挙後の12月20日に期限を切ったことでクリスマス前のタイミング、さらに新年に向けて米議会での財政協議は緊迫度を増すことが予想される。2025年1月1日には現在失効状態の連邦債務上限法が復活する予定であり、2025年度予算を巡る政治的混乱が、市場の混乱を招くとの見方は根強い。

先週の動きで取り上げたムーディーズの米国債格下げ警告はこうした状況を捉えたものである。

今週(9月30日週)の見通し:9月米雇用統計、8月米雇用動態調査とパウエル議長などFRB高官発言に注目  

NY金2,655.00~2,720.00ドル、JPX金1万2100~1万2400円を想定

今週は月初のイベント週となるが、FRBが雇用重視に大きく舵を切ったことから、10月4日発表の9月米雇用統計が最大注目事項となる。前月比での雇用者の増減はもとより、前月はわずかに低下した失業率にも関心が集まる。この結果は年内の利下げ幅見通しに影響を与えるだろう。

その関連で10月1日の8月米雇用動態調査(JOLTS)にて求人の動向を見る。同じ日のISM(サプライマネジメント協会)製造業景況指数も市場への影響は大きい。

さらに今週もFRB高官の発言機会が多く、9月30日にパウエルFRB議長の講演、10月2日には9月FOMCにて反対票を投じ注目されたボウマンFRB理事他複数名の講演が予定されている。先週のPCE統計を受けどのような発言をするかが注目となる。

こうした中で今週の想定レンジは、NY金が2,655.00~2,720.00ドルを見込んでいる。一方、国内金価格は1万2100~1万2400円のレンジを想定している。