先週の上海総合指数、深セン総合指数、創業版指数、香港ハンセン指数はそろって続伸となりました。週前半は中国石油化工(00386)が保有するパイプラインの爆発事故を受けてエネルギー関連株を中心に軟調な動きとなりました。しかし、26日に中国人民銀行の周小川総裁が国内金利の自由化や人民元の変動幅の拡大などの金融改革を推進していると発言し、中央委員会第3回全体会議(三中全会)後から高まっている改革への期待感を後押しする形となりました。しかし、たとえば金利の自由化が進むと言うことは国営銀行にとっては利益率の圧縮につながるため、今週大きく上昇したのは中小型株が主力の深セン総合指数と創業版指数で、大型株が主力の上海総合指数は小幅上昇に留まりました。

大型株が軟調となっているもう1つの背景としては中国で金利が上昇していることです。中国の10年債利回りは一時4.7%を突破して2004年以来の高水準をつけました。金利上昇の直接的な理由は中央銀行が資金供給を引き締めていることで銀行間金利が逼迫しているためですが、要するに当局は、緩やかに上昇しているインフレを警戒している一方、中国経済の成長については現状のタイトな流動性のままでも失速しないと見ていると言うことだと思います。このため、インフレが落ち着かない限りこの状況が続くとみられるため、当面は大型株上昇の足をひっぱる要因となりそうです。

その他の材料としては2つ。まず、中国が東シナ海の空域に防空識別圏(ADIZ)を設定した問題について。しかしこれは、中国の国防費増大への期待感につながり、防衛関連株が買われており、中国株にとってはプラスに働いています。もう1つは国務院が中小炭坑の開発中止や閉鎖を行い、石炭業界の改革を推進する方針を発表したこと。こちらは中小石炭企業の淘汰は上場している大手石炭企業のシェア拡大や利益率の改善につながるため、石炭株の上昇につながっています。今後の相場については、引き続き中国政府の改革に対する取り組みが材料になってくると思います。

コラム執筆:戸松信博