昨日、「ART IN THE OFFICE 2024」のレセプションパーティをオフィスで開催しました。このプログラムは、マネックスグループが2008年から続けているもので、現代アートを通じて、社員が多様な価値観や表現に触れる機会を提供しています。新進アーティストを対象に、マネックスグループ本社オフィスプレスルームの壁面に展示する平面作品案を一般公募し、受賞作を約一年間展示するものです。受賞アーティストは、一定期間オフィスに滞在し、社員との交流を通じて作品を制作します。社員にとって、アーティストが試行錯誤を重ねる過程に触れることができるのは、単なるアートの鑑賞にとどまらず、多様な視点を受け入れ、価値観を広げる貴重な機会につながると考えています。
第17回となった今年の受賞作品は、植松美月さんの「雨だれにひそむ、」という作品です。これは、彼女が行う呼吸のタイミングに合わせて、紫のインクが染み渡ったロール紙に、その数を打刻するという作品です。「吸って吐く」これで1回です。1、2、3、と打刻していきます。遠目にはただの模様に見えますが、近づいてみると無数の数字が刻まれていることに気づきます。「え?!呼吸のたびに打刻?呼吸をずっと意識するの?」私には到底考えつかない発想と感性です。
普段、私たちは呼吸や日常の行為を意識することなく過ごしていますが、こうした「当たり前」の背後には、無数の選択や感覚が存在しています。植松さんの作品に改めて向き合うと、アートが単なる視覚的な表現を超えて、時間と生命そのものを捉えていることに気づかされます。昨日のレセプションで、植松さんと話し、その感性に触れたことで、「生きることとは何か」という問いを考える時間を得ることができました。
「生きる」とは「表現すること」だと言われます。アーティストは自らの作品を通じて「生」を表現し、私たちにその一端を見せてくれます。とはいえ、人生を何かの形で表現することは、特別な才能や技術を持つ人間に限られるものではないと思います。むしろ、私たち一人ひとりが、日々の生活の中で無意識に「表現」しているのではないでしょうか。存在し、呼吸し、食事をし、誰かと話す。それ自体が私たちの「生」の表現であり、私たちの人生そのものがアートだと言えます。時間の流れの中で、私たちは絶えず変化し、成長しています。それこそが、個々の人生が持つ独自のアートではないでしょうか。
日々の営みそのものがアートであり、私たちが「生きる」ことが一つの表現なのではないか。そう考えると、自分の存在や行動が特別であり、尊いものであることに気づかされます。時には立ち止まり、目の前にある日常を「アート」として見つめてみませんか?一瞬一瞬の積み重ねが、世界との関わりの中で新たな表現とつながり、私たちの「生」を豊かにします。それが、私たちが生きることの本質であり、人生という名のアートの輝きではないでしょうか。
⇒ ART IN THE OFFICE 2024 作品「雨だれにひそむ、」