先週の上海総合指数、深セン総合指数、創業版指数、香港ハンセン指数はそろって続伸となりました。11月15日に発表された中国政府の経済改革案が中途半端で終わるとの懸念を払拭する、踏み込んだ内容であったためです。具体的には金融業界やその他業界の規制緩和、天然資源価格の市場原理の導入、農村部の土地権利拡大、国営企業の配当性向の拡大(税引き後利益の15%から30%に引き上げ)といった内容です。その他、一人っ子政策の緩和などの意向も伝えられました。
規制緩和、市場原理の導入は投資家にとって大きなチャンスです。わかりやすく言えば、赤字だった国鉄が民営化されてJRになって黒字になるようなものです。たとえば中国でも、将来的に大きな権益を持つ国営企業が解体されたり、規制によって守られていた業界への新規参入が許可されたりするなどして、業界の再編が行われるようになれば、既得権益層にとっては大きなダメージとなりますが、中国経済は活性化され、成長企業が誕生しやすくなるなど、投資家にとってチャンスが生まれます。もちろん今回の改革案はそこまで踏み込んだ大胆なものではありませんが、その第一歩ともいうべきもので評価できるのではないかと思います。
ただ、先週も週後半の株価は伸び悩みました。理由は2つあります。1つは足もとの中国の経済指標が今ひとつ優れていないためです。11月21日にHSBCが発表した11月の中国製造業景況指数(PMI)速報値は50.4で、10月確報値の50.9から下落。これは輸出の弱さが影響しています。2つめの理由は改革への期待感が徐々に収まり、今度は実際にそれが実際にどの程度実行できるのか?という懸念が出てきたことです。全体の方針は打ち出されたものの、地方政府や国有企業などの既得権益層からの抵抗は必至で、今回発表された青写真をどこまで実現できるかは習国家主席の手腕にかかっています。今後は中国の経済指標の動向と中国政府の改革への取り組みの両方を睨みながらの相場展開になると思います。
コラム執筆:戸松信博