先週の上海総合指数、深セン総合指数、創業版指数、香港ハンセン指数は反発しました。週前半は11月12日に閉幕した中央委員会第3回全体会議(三中全会)後に発表された改革案が、金融規制の緩和や農家の権利拡大などの予想されていた事項には触れていたものの、具体的な手法は示さない曖昧なものとなっていたため失望売りが出ました。既得権益層の抵抗により踏み込んだ政策が発表されなかったわけです(個別では、改革を進め、予算増大が期待される出版・メディアや医療関連の銘柄の中には買われた銘柄があります)。
しかし、週末には一転して大きく株価は上昇しています。理由は2つ。1つは15日に出版された共産党の機関誌である人民日報で、政府高官のコメントとして「中国の改革が前例のないものになる」と伝えられたことから改革に対する期待感が再び高まったこと。もう1つは米国のイエレン次期FRB議長の公聴会声明の内容が、金融緩和縮小を急ぎすぎては危険といったものであったことです。これにより世界的に株式市場が上昇基調になり、中国株もその恩恵を受けることが出来ました。
ここで株価指数のチャートを確認してみましょう。香港H株指数はちょうど200日移動平均線を50日移動平均線が上に突き抜けるゴールデンクロスとなったところです。米国株式市場の影響を受けやすい香港ハンセン指数は既に10月初めにゴールデンクロスとなっています。香港市場は米国株式市場の影響を受けやすいこともあり、金融緩和縮小が更に遅延する見通しが強くなったことで、年末まで強い展開が見込めそうな気配となってきたと思います。一方、上海総合指数はゴールデンクロスまでにはまだ時間が掛かりそうですし、先週末の大幅高にしても終盤は失速し、上ヒゲが出てしまっています。これは前述の通り、改革への期待が再度高まっているものの、既得権益者の抵抗により実際には、なかなか踏み込んだ政策を出すことは難しいのではないか?という市場関係者の疑念をストレートに表しているような気がします。
コラム執筆:戸松信博