モトリーフール米国本社、2024年8月4日投稿記事より

AI関連銘柄の株価に波紋を広げたゴールドマン・サックス[GS]のレポート

ゴールドマン・サックス[GS]が2024年6月25日に、「Gen AI:Too Much Spend, Too Little Benefit?(生成AI:支出が多い割に利益は少ない?)」と題する示唆に富む調査レポートを発表しました。この分析はハイテクセクターに波紋を広げ、多くのAI関連銘柄の株価が下落しています。

ゴールドマン・サックスのレポートは、AIの短期的な経済的影響に厳しい見方を示しています。具体的には、AIインフラの構築には1兆ドルという莫大なコストがかかり、さらに問題なのは、AIによって実現されるコスト削減でも、この莫大な構築コストを相殺できない可能性があるというのです。また、エネルギーのひっ迫によって半導体業界以外では、AIによる売上高の成長が限定的となる可能性についても問題を提起しています。

景気減速や地政学的緊張に既に神経を尖らせていた投資家は、このレポートの内容を重く受け止めたようです。その結果、AI関連主力銘柄の多くで株価が急落しました。

AI銘柄の下落は買いの好機か

ゴールドマン・サックスの分析には一理ありますが、目先の問題に焦点を当て過ぎているようにも思えます。AIは一夜にして世界に革命を起こすわけではありませんが、長い目で見て変革をもたらす可能性もあるでしょう。今は、さまざまな産業が再構築され、生産性が向上し、まったく新しいビジネスモデルが生み出される、技術シフトの初期段階にあります。

AIはまだ黎明期なのです。進歩を遂げた2~3年後に現在を振り返ったら、今のAIは原始的に見えるでしょう。今後、AIを採用した真の「キラーアプリ」が出現し、それが広く普及して、テクノロジーの能力を劇的に変えるのはそう遠くないと思われます。

さらに、アップル[AAPL]のような利用者の多いエコシステムにAIが深く組み込まれるようになれば、AIの可能性に対する人々の認識や評価は飛躍的に高まるでしょう。これをきっかけに、ハイテクセクター全体で投資やイノベーションの新たな波が引き起こされる可能性があります。

このような長期的展望を考慮すると、AI銘柄の最近の下落は、辛抱強い投資家に魅力的な買い場を提供していると思われます。その中でも特に魅力的な銘柄は、エヌビディア[NVDA]とアマゾン・ドットコム[AMZN]です。

エヌビディア[NVDA]:AIの絶対的王者

AIブームの中心にいる半導体メーカーのエヌビディアは、ゴールドマン・サックスがレポートを発表して以降、株価が15%近く下落しています。AI向け半導体市場を絶対的に支配している企業の株価が2桁も下落している今は、投資のチャンスです。

エヌビディアの画像処理装置(GPU)は、自律走行車から大規模言語モデルまで、ありとあらゆるAI処理の事実上の業界標準となっています。最近の業績がこの事実を裏付けています。2024年度(2024年1月期)の売上高は、前年比126%増という驚異的成長を遂げ、粗利益率も73%という目覚ましい結果となりました。

エヌビディアの素晴らしさは、たゆまぬ革新性にあります。次世代のAI向けGPUであるBlackwellは、画期的技術の限界を広げ続ける同社の取り組みを象徴しています。圧倒的な市場シェアとイノベーションへの注力を考えると、エヌビディアはAIが動かす未来から恩恵を受ける絶好のポジションにいます。

アマゾン・ドットコム[AMZN]:DNAに組み込まれたAI

Eコマースとクラウドコンピューティングの大手企業であるアマゾン・ドットコムもゴールドマン・サックスのレポートの影響を受け、株価は10%下落しています。これは、事業全体にAIを組み込んでいる同社に投資するチャンスです。

アマゾン・ドットコムのAI戦略は多面的です。Eコマースでは、商品のお勧め、在庫管理、物流の最適化など、さまざまな場面でAIが力を発揮します。クラウドサービスのアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)はAIと機械学習のツールを包括的に提供し、あらゆる規模の企業がAIの力を活用できるようにしています。アマゾン・ドットコムの最近の成長率はエヌビディアほど爆発的ではありませんが、それでも十分、注目に値します。ウォール街は2024年から2025年にかけて、アマゾン・ドットコムの売上高が22%増加すると予想しています。アマゾン・ドットコムのような巨大企業にとって、2桁の売上成長を一貫して続けることは素晴らしい成果です。

アマゾン・ドットコムの膨大なデータリソースとクラウドインフラは、AIソリューションを大規模に開発・展開する上で大きな強みになるということです。

長期的視点を持つ

ゴールドマン・サックスのレポートに示されるような、AIをめぐる最近の市場の懐疑論は、AIがもたらす長期的な変革の可能性を見落としている可能性があります。エヌビディアもアマゾン・ドットコムも、短期的なコスト懸念や景気の逆風にかかわらず、進行中のAI革命から恩恵を受けるのに極めて有利な立場にいます。

エヌビディアは、革新性とAI向け半導体における市場支配力により、AIエコシステムにおける要となっています。アマゾン・ドットコムは、Eコマース、クラウドサービス、消費者向けデバイスにまたがる多様なAI戦略により、成長と価値創出のための複数の道が開かれています。つまり、ボラティリティが高まっているとはいえ、これらの銘柄には投資する価値があると考えられるということです。

また、個別銘柄ではなく、このテーマで投資を考えているならば、AIや機械学習の関連企業を投資対象としている上場投資信託(ETF)に投資するという手段もあるでしょう。これらのETFの多くは、エヌビディアやアマゾン・ドットコム等を投資対象としています。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。アマゾン・ドットコムの子会社であるホールフーズ・マーケット元CEOのJohn Mackeyは、モトリーフール米国本社の取締役会メンバーです。元記事の筆者George Budwellはアップルの株式を保有しています。モトリーフール米国本社はアマゾン・ドットコム、アップル、ゴールドマン・サックス・グループ、エヌビディアの株式を保有し、推奨しています。モトリーフールは情報開示方針を定めています。