先週の中国本土の株式市場は上海総合指数、深セン総合指数、創業版指数ともにそろって大幅続落となりました。理由の1つには短期金利の急騰があります。キッカケとなったのは中国人民銀行の宋国青・貨幣政策委員会委員が「インフレ懸念が高まる中、金融政策はやや引き締められるだろう。方法は主に公開市場操作による微調整によって行われ、金利や預金準備率を変更する可能性はないと思われる」と発言したことです。さらに22日(火)には人民銀行がリバースレポ(債券を担保として資金の貸し出しを行う取引)による銀行システムへの資金注入を見送りました。この一連の流れが、人民銀行は今後金融引き締めの姿勢を強めるとの懸念につながりました。
金融政策が引き締め気味となっている背景には7月以降、中国経済の回復期待により、9月以降海外から中国への資金流入が急増していることがあると思います。実際のところ、中国の金融機関が9月に吸収した外貨は1264億元で8月の273億2000万元から急増しています。もっとも、金利や預金準備率を変更する可能性はないとコメントされていますし、市場に資金が余剰するようであれば公開市場操作による資金吸収は当たり前のことですので、これで急激な引き締めに転じるとみるのは早計と思います。たしかに中国では6月にも流動性の逼迫が懸念され短期金利が急騰した経緯がありますが、このとき、7日物の銀行間金利は28.0%まで上昇しました。今回は10月18日に3.5%だった金利が10月24日に一時6.94%まで急騰した程度ですし、終値は5.21%まで下がっていますので6月の比ではありません。
しかし、3ヶ月近く上昇基調が続いた中国株ですので、中国人民銀行が引き締め気味に転じている以上、短期的な調整はあってもおかしくないところだと思います。海外からの資金流入がある程度落ち着くまでは、引き締め気味の金融政策が続くと思います。ただ、今回は欧州経済の回復など外的環境も良く、中国経済も立ち直りがみられていますし、中国当局としても11月に共産党中央委員会第3回全体会議(三中全会)を控えていますので、6月と同じような混乱にはしたくないでしょうから、暴落につながるような事態にはならないのではないかと思います。
コラム執筆:戸松信博