2024年7月16日(火)21:30発表(日本時間)
米国 小売売上高

【1】結果:市場予想を上回り、米消費の堅調さを示す

小売売上高(前月比)
結果:0.0% 予想-0.3%
前回:0.3%(速報値0.1%から上方修正)

自動車・同部品除く小売売上高(前月比)
結果:0.4% 予想0.1%
前回0.1%(速報値-0.1%から上方修正)

コア小売売上高(自動車、ガソリン、外食、建設資材除く小売売上高・前月比)
結果:0.9% 予想:0.2%
前回0.4%

【図表1】米国小売売上高の推移
出所:米商務省、Bloombergよりマネックス証券作成

米国では、個人消費がGDPの約7割を占めることから、その動向を確認できる小売売上高に注目が集まります。6月の小売売上高は前月比0.0%と横ばいでしたが、市場予想の-0.3%を上回る結果となりました。

米国の個人消費は5月まで2ヶ月連続で市場予想を下回り、消費減速への懸念が強まっていましたが、今回の結果は依然として米消費が堅調であることを示しています。

また、自動車の販売は月ごとに大きく変動するため、自動車を除いた小売売上高に注目が集まりますが、その数値も市場予想の+0.1%に対して+0.4%と大きく上回りました。

さらに、GDPの算出に間接的に用いられるコントロール・グループ(季節変動の大きい自動車、ガソリン、外食、建設資材を除いたコア小売売上高)は前月比+0.9%と市場予想を大きく上回る増加を示しました。この結果を受け、アトランタ連銀のGDPNow(短期予測モデル)は4-6月期GDP(前期比年率)を2.0%から2.5%に上方修正しました。

【2】内容・注目点:裁量的支出を含む幅広い品目で売上増加、無店舗小売の伸びが牽引

【図表2】品目別小売売上高(前月比)
出所:米商務省、Bloombergよりマネックス証券作成

次に図表2の通り、品目別に見ると、6月は13項目のうち10項目で売上が増加しました。建築資材や家具などの裁量的支出を含む幅広い品目で増加が見られましたが、特にオンライン販売などの無店舗小売が+1.9%と好調でした。

5月から6月にかけて実施された戦没者追悼記念日や父の日の値下げキャンペーンが影響した可能性があります。また、7月にはアマゾン[AMZN]のプライムデーとして知られる毎年恒例のセールイベントがあり、無店舗小売は7月も好調が続くことが予想されます。

一方で、売上減少が目立つのはガソリンスタンド(-3.0%)と自動車・同部品(-2.0%)でした。6月の米CPIや米PPIでも示されている通り、ガソリン価格が下落しており、その影響により、ガソリンスタンドの売上は減少したのでしょう。夏場のドライブシーズンに向けて、一般的にガソリン需要が高まり価格は上昇する傾向にあるため、今後の推移にも注目したいところです。

また、自動車・同部品の売上減少は、全米の自動車販売店にソフトウェアサービスを提供するCDKグローバル社に対するサイバー攻撃の影響によるものと見られます。サイバー攻撃の影響は、販売の繰り越しにとどまり、7月以降には回復が見込まれるとされています。

【3】所感:景気後退懸念和らぐ良好な結果 需要増による物価押し上げ圧力には注意

米連邦準備制度理事会(FRB)はインフレ退治を掲げ、経済への一定のダメージを容認して高い政策金利水準を維持しています。政策金利が高く維持される中、ここ数ヶ月のデータはインフレ鈍化を示す良好な結果が続いていました。

一方で、労働市場は徐々に冷え込みを見せ始め、消費の悪化による景気後退も懸念されています。そうした状況の中、6月の小売売上高が予想以上に強い結果を示し、米国の消費が依然として好調であることが明らかになりました。これは「インフレ鈍化×景気好調」のソフトランディングを意識させる理想的な組み合わせと言えるでしょう。とはいえ、小売売上高はもともと月による変動が激しいため、数ヶ月のトレンドを確認する必要があります。

また、一方で好調な需要は物価の押し上げ要因となるため、インフレに対する懸念にも繋がります。市場では9月の利下げ開始予想に特に変わりはありませんが、引き続き物価動向には注意が必要です。7月26日には、FRBがインフレ目標として採用しているPCEコアデフレーターが発表されます。

フィナンシャル・インテリジェンス部 岡 功祐