今年は選挙イヤーと言われております。主要国では1月に台湾で与党民進党が総統選で勝利も立法院選挙で第2党に転落となり、2月のインドネシア大統領選挙では高い支持率であった現政権の路線を継承するプラボウォ氏が当選も国会議員選挙では同氏の党は伸び悩み少数与党に転落しています。また4月の韓国総選挙では少数与党が大敗しました。
直近では南アフリカで常に議席の過半数を得ていたアフリカ民族会議(ANC)が過去30年で初めて過半数割れをした歴史的選挙となり、インド総選挙でも与党のインド人民党(BJP)が過半数を失いました。 ただし、連立パートナーである政党を含めれば過半数を維持したことでモディ政権は3期目に入ることになります。なお、メキシコでは高い人気を誇る現大統領の後継者といわれる候補が危なげなく当選、議会選挙でも与党3党が勝利しております。
メキシコを除いては物価高など現経済・政治環境への不満が現れた結果です。新興国中心の記載となりましたが、先週投開票が行われた欧州議会選でも親EU派全体で過半数の見込みながら、インフレや移民など市民の不満を取り込む形で極右を含む右派が躍進しました。なおこの結果を受けてフランスでは下院の解散総選挙が表明されております。
コロナ禍以降経済の変調を受けて各国で対策が検討され、世界的に株高の展開を見てきましたが、その裏ですすむ格差・不満の蓄積がとうとう世論として示された結果と言えるでしょう。その点ではこれら国民の不満は予見されるべきながら、報道や変動高まる株式・為替市場を見ていると事前予想に反する結果とみえます。
今後はイギリス、アメリカでも選挙となりますがどのような点を意識するべきでしょうか。まず市場が織り込むマクロ経済・業績といった点と投票に向かう人々の興味関心が異なっていることもあり、市場の事前予想は当てにならないのは今年に限らずの教訓であります。 そして株式市場にとって大切なのは、当選が誰ならどうと即座に反応するのではなく、経済がどう変化するか、であり本結論もその点を強調したいのですが、短・中・長期的な視点で選挙をめぐるポイントを整理したいと思います。
短期的には不透明感を嫌う市場は選挙をめぐる動向に振られやすいでしょう。ただしこのような政治をめぐる憶測はノイズに過ぎず、中期的な視点で政策変更の可能性による景気の方向性を理解する必要があります。 国民に選ばれた新体制が経済を破滅に向かわせる、ということは考えづらいものの、これまでの成長軌道がどう変化していくのか、一国が抱える諸問題にどう取り組むのか、変化が激しい新興国では特に短期的な変化が注目されますし、米国の場合は期待されるソフトランディングの軌道が変化するのか、そのような観点で動向を見守る必要があります。
最後に長期的な観点ですが、富める者が富む株式市場において、国際社会の分断や格差、国民の不満といったこれまで大きく材料視されてこなかった点がいよいよ考慮すべき事項として台頭し始めています。 IMFも警鐘を鳴らすように各国で一段の財政赤字が許容されない中で、国民の求める施策にどう対応していくのか、中期的なマクロ経済に対する観点に加え、このような構造変化の可能性が意識されます。