モトリーフール米国本社、2024年6月9日投稿記事より

遺伝子編集技術活用のバイオ企業

キャシー・ウッド氏は2つのことで知られています。長期的に勝利を収めるイノベーター企業を選び出すこと、そしてそれらの企業の株式を魅力的な価格で手に入れることです。アーク・インベストメント・マネジメント(以下、アーク社)の創業者でCEOを務める同氏は、大衆の逆を行くことも、他の投資家から見放されている企業を選ぶことも厭わず、いずれ大きな利益をもたらしてくれる、長期的な可能性に着目しています。

ウッド氏は、ヘルスケア分野の中で特に遺伝子編集技術に魅力を感じており、以前からこの分野の企業2社に投資しています。最近もこれらの企業に追加投資したばかりです。2社とはCRISPRセラピューティクス[CRSP]とインテリア・セラピューティクス[NTLA]で、どちらの企業もCRISPR遺伝子編集技術を活用しています。これは、DNAを特定の位置で切断し、自然な修復プロセスに引き継がせる技術です。

これは、さまざまな病気の機能的治療法を生み出す可能性がある技術であり、この技術を使った医薬品を販売する企業に爆発的成長をもたらす可能性があります。2社について詳しく見てみましょう。

CRISPRセラピューティクス[CRSP]は新薬発売

CRISPRセラピューティクスは、アーク社が運用するヘルスケア関連ETFの組み入れ銘柄の中で2番目に大きなポジションを占めています。過去3年間で株価は47%下落していますが、今、この画期的企業に投資するチャンスかもしれません。なぜなら、同社は最近、血液疾患であるベータサラセミアおよび鎌状赤血球症の治療薬として、最初の製品であるCasgevyを市場に投入したからです。

パートナーである大手バイオ企業のバーテックス・ファーマシューティカルズ[VRTX]が製品の商業化を主導しています。バーテックスは多くの製品を上市した実績があり、この分野の専門知識があります。Casgevyの承認は、CRISPRセラピューティクスの技術にお墨付きが与えられたことを意味するため、同社にとって重要なステップです。Casgevyは、CRISPR技術を用いた遺伝子編集医薬品として初めて承認された医薬品です。

CRISPRセラピューティクスは他にも、免疫腫瘍学や自己免疫疾患といった分野で有望な遺伝子編集候補の開発をいくつか進めています。同社はまた、バーテックス・ファーマシューティカルズが進める1型糖尿病治療薬の開発プログラム向けに遺伝子編集技術をライセンス供与し、そこからも収益を得ています。

もう1つの好材料として、CRISPRセラピューティクスのキャッシュポジションがあります。同社のバランスシートには20億ドルを上回る現金があり、新薬の研究開発および販売までの計画を安心して進めることができます。

インテリア・セラピューティクス[NTLA]は2つの薬が後期臨床に

インテリア・セラピューティクスは市場に投入された製品はまだありませんが、初の製品上市が近づいています。同社は現在、2つの候補薬が後期(第3相)臨床試験の段階にあります。トランスサイレチン型アミロイドーシス(ATTR)と遺伝性血管性浮腫(HAE)の治療薬です。

トランスサイレチン型アミロイドーシスは、折りたたみ異常を起こしたタンパク質が沈着して、さまざまな臓器に悪影響を及ぼす疾患です。遺伝性血管性浮腫は、ペプチドが過剰に作られることによって、激しい腫れが繰り返し起こる疾患です。インテリア・セラピューティクスは現在、心筋症を伴うトランスサイレチン型アミロイドーシス治療薬の第3相試験の患者登録をしており、遺伝性血管性浮腫については、候補薬NTLA—2002の第3相試験が2024年下半期中に開始される予定です。

同社は最近、NTLA—2002の第1相試験の長期追跡データを報告し、遺伝子編集治療が機能的治療法となる可能性を補強しました。報告によれば、患者10人のうち8人は発作が全く起きなくなり、試験で薬を投与された最初の患者はこの状態が2年以上続いています。

インテリア・セラピューティクスのキャッシュポジションも堅実で、バランスシート上には9億5,000万ドルを上回る現金があります。会社側によると、これで2026年後半までの事業資金を賄えるとのことです。臨床開発のペースを考えると、ちょうどこの頃に、同社初の製品が上市される可能性があります。

インテリア・セラピューティクスの株価は過去3年間に68%下落していますが、それでひるむウッド氏ではありません。それどころか、ウッド氏のように、未来の勝者となるイノベーター企業を底値で手に入れようと考える投資家にとって、魅力的かもしれません。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。元記事の筆者Adria Ciminoは、バーテックス・ファーマシューティカルズの株式を保有しています。モトリーフール米国本社はCRISPRセラピューティクス、インテリア・セラピューティクス、バーテックス・ファーマシューティカルズの株式を保有し、推奨しています。モトリーフールは情報開示方針を定めています。