先週の中国株は上海総合指数、深セン総合指数、創業版指数は揃って上昇し、創業版指数は年初来高値を更新しました。大きく材料は3つあります。1つは9月1日に発表された中国8月の公式製造業景況指数(PMI)が51.0と7月の50.3やエコノミスト予想の50.3から上昇したことです。さらに中国と貿易の関連性が高いユーロ圏の8月の製造業PMI確定値が51.4と従来発表の51.3から上方修正されたことも好感されました。景気がスローダウンしていた欧州と中国が底打ちし、相乗効果で年末に向けて景気が回復するとの期待感が膨らんでいます。

2つ目は11月に予定されている第18期中央委員会第3回全体会議で都市化を推進するために、中国政府が農民に商業開発用に不動産を貸し出すことが議論される可能性があるとの憶測が強まり、農業関連銘柄が大きく上昇したこと。3つ目は以前から指摘している上海自由貿易特区に関連する銘柄が上昇していることです。国営メディアは9月下旬に上海自由貿易特区が設立されると報じていますが、詳細は明らかにしていません。その一方で、先週は2013年上半期の中国の貿易総額に占める人民元決済の割合が16.4%と過去最高になり、中国政府が人民元の国際化を推進しているニュースに絡め、上海自由貿易特区では人民元の自由化が認められる可能性があるとの報道がなされました。

先週は香港株も上昇しています。前述の理由に加え、米国株が反発したことも好材料となっています。個別では海運株が買われています。欧州経済の底打ちで中華圏との貿易が拡大基調になるといった見通しの他、海運運賃の指標となるバルチックドライ指数が8月後半以降急上昇していることなどが材料となっています。長期でチャートを俯瞰すると中国株は全体的に7月から緩やかな回復基調を辿っていると思います。一番大きな背景としては、やはり冒頭にある欧州と中国の景気底打ち観測があると思います。また上海貿易特区など、中国政府の政策も徐々に効いてきている模様です。米国の量的緩和政策が景気や株価を悪化させることなく綺麗に縮小を行うことができれば、中国株は年末に向けて緩やかな回復基調が期待できると思います。

コラム執筆:戸松信博