2024年5月31日(金)21:30発表(日本時間)
米国 PCE価格指数
【1】結果:物価指数は概ね市場予想通り。個人消費支出は実質ベースで減少
PCE価格指数の4月の結果は、概ね市場予想通りの結果となりました。全ての品目を含む総合指数は、前年比ベースでは2.7%と市場予想・前回結果と一致しました。前月比ベースでは、0.3%と市場予想通り前回結果の0.7%から鈍化しています。
一方で、価格変動が大きい食品とエネルギーを除いたコア指数は、前年比ベースでは2.8%と市場予想、前回結果から横ばいとなりましたが、前月比ベースでは0.2%と市場予想以上に鈍化が見られました。
また、米国の個人消費支出は前月比0.2%増と3月の0.7%増から低下し、インフレを考慮した実質ベースでは-0.1%と、米国の消費支出に陰りが見えています。
【2】内容・注目点: スーパーコアは伸び鈍化も依然高止まり。長引くインフレに消費は鈍化
PCE価格指数とは、GDPを算出する際に家計の財・サービスの消費金額を集計する個人消費支出(Personal Consumption Expenditures)を基に作成される物価指数です。CPIと同様に米国の消費段階における物価動向を測定する指標ですが、PCE価格指数の方が対象品目の幅が広く、また消費者の価格変化に伴う購買行動の変化をより捉えることができるため、米連邦準備制度理事会(FRB)が金融政策を決定する際にはPCE価格指数をより重視しています。インフレ目標2%と言った際、一般的にこのPCE物価指数の数値を指しています。
CPIの方が、速報性があるため市場では注目度が高くなっていますが、より厳密にはPCE価格指数の方が重要であると言えるでしょう。
そして、今回4月のPCE価格指数は概ね市場予想通りの結果となりました。変動の大きいエネルギーと食品を除いたコア指数は前月比+0.25%と2024年に入ってから最も小幅な伸びとなっています。
また、FRB当局者が「スーパーコア」として注目するエネルギーと住宅を除くPCEサービス価格は前月比0.26%と前回の+0.42%からは鈍化しています。
その一方、図表3の通り、前年比ベースで各種価格指数をみると、コア指数は15ヶ月連続で下落しているもののスーパーコア指数は高止まりしており、横ばい推移が続きます。
こうしたインフレの伸びが横ばい推移で高止まりとなる中、個人消費は鈍化しており4月の実質個人消費支出は-0.1%となりました。内訳としては、サービス支出が+0.1%と小幅な上昇に対し、財の支出が-0.4%の下落となっています。所得の小幅な伸びに対し、長引くインフレが消費者の消費動向に影響を与えていることがわかります。
【3】所感:予防的な利下げが必要か?金利高とインフレを受け個人消費が鈍化
FRBはインフレを抑制するために高金利の維持を続けていますが、金融政策によって制御できるのは主に需要サイドのインフレです。図表5はサンフランシスコ連邦準備銀行がまとめているPCE価格指数を需要要因と供給要因に分けたグラフですが、青色バーで示された需要要因のインフレは徐々に低下しており高金利の効果が表れていることがわかります。
PCE価格指数は依然としてインフレ目標の2%を上回って推移していますが、第一四半期のGDPの落ち込みや4月の実質個人消費支出が-0.1%と減少したことが示しているように、金利高と長引くインフレの影響で米経済には陰りが見え始めています。
経済の落ち込みが急に生じる傾向にある一方で、景気回復のための利下げが効くには時間がかかることから予防的な利下げの実施をといった主張も出てきています。利下げ実施に向けて一段と明確なインフレ鈍化のデータが待ち遠しいところです。
フィナンシャル・インテリジェンス部 岡 功祐