先週の中国株は先々週とは逆の動きとなりました。大型株主体の上海総合指数は小幅反落となりましたが、中小型株主体の深セン総合指数と創業版指数は上昇。特に創業版指数は年初来高値を更新しており、非常に強い勢いです。先週は中国人民銀行の周小川総裁が中国経済は健全であり、下半期の金融政策に大幅な調整はないとのコメントをしたことやHSBCが8月の中国製造業PMI速報値を50.1と発表したことがありましたが、大きな材料にはなりませんでした。8月16日に発生した光大証券による誤発注問題による影響も短期的な問題として認識され、それほど材料にはなっていません。

大型株の株価を押し下げたのは、目新しい材料ではなく、中国政府が推し進める生産設備過剰を抑える政策などの構造改革が大手企業の業績に悪影響を及ぼすとの懸念や、銀行が不良債権増加の懸念からバランスシートの強化に務めるため、流動性のタイトな状況が続くとの懸念といった従来からの懸念でした。しかしその一方で、中国政府が上海自由貿易区設立計画を承認したことや高齢者介護への投資促進のために、手順を簡略化したことなどが好感され、関連の中小企業が大きく上昇し、創業版指数などの上昇を牽引しています。上海自由貿易区では関税がかからず資材の輸入、加工製造、再輸出が可能となるとのことで、今後も材料として注目していけると思います。

 香港ハンセン指数、香港H株指数は大きく下落しました。特に8月20日は、米国のFOMCを前にした警戒感からインドネシア、タイ、インドなどのアジア新興国の株価急落の影響を受ける形で香港株も大きく下落しました。しかし週末には前述のHSBC発表の8月の中国製造業PMI速報値が好調だったことや、ドイツのPMIが好調だったことなどが株価を支えました。今後ですが、前述のHSBC発表の中国製造業PMI速報値が好調だったことや、先週指摘した中国のその他の経済指標が好調であることなどから、中国単独で考えれば緩やかな回復が期待されるところです。ただ、米国の量的緩和政策縮小懸念は引き続き売り圧力となりますので、その点は注意が必要です。

コラム執筆:戸松信博