小学校低学年の頃だったかと思うのですが、同級生と一緒にお小遣いで母の日に花を買いに行ったことがあります。限られたお小遣いの中で同級生はカスミ草に小さな花を何輪か併せてブーケ風にしてもらっていましたが、私はまだ花が開いていない蕾の真っ赤なカーネーションをたった一輪だけ選んで買って帰りました。これで予算いっぱい。その頃から一点豪華主義だったのだな、と思い出す度に可笑しくなりますが、このエピソード、実は決して愉快なものではないのです。
友達が自宅に帰る前に私の家に寄ったのですが、母は同級生が彼女の母のために買った小さな淡い色のブーケを見てとても良い買い物だと褒め、私の花の選び方を賢くないと否定したのです。実際には、家に遊びに来てくれた同級生の子を単純に褒めたかっただけなのかもしれません。しかし、自分が母のために選んだカーネーションより同級生のカスミ草のほうが良いの?と幼心に傷ついたのを覚えています。
この記憶のせいというわけではありませんが、毎年母の日に何を贈ろうかとても悩みます。日々の家事が楽になるように名産品など食品を贈ろうか、それとも思い切り贅沢な洋菓子をセレクトして優雅な時間を過ごしてもらおうか。どれもこれも母の価値観とズレているような気がしてギリギリまで考えるのです。結果毎年、とても喜んでくれてお礼の電話をもらうので間違ってはいないはず?!ですが、今、本当に欲しいものは何だろうと考えを巡らせるのです。ひょっとしたらもう物品など欲しくはないのかもしれません。
蕾のカーネーションは一輪挿しの花瓶に挿して1週間ほどで大輪の花を咲かせました。母もたいそう喜んでくれて、大きな花が咲いたね、これを選んで良かったねと声をかけてくれたこともちゃんと覚えています。ほらね、私の選んだカーネーションが良かったでしょ。結局最後はこの気持ちで贈り物を決めることにしています。今年も母が元気でいることに感謝して。
※これまで大橋氏のつぶやきは毎週金曜日に掲載していましたが、2024年5月から火曜日掲載に変更となりました。