2024年5月1日(水)23:00発表(日本時間)
米国 ISM製造業景気指数
【1】結果: 製造業景気指数は再び景気縮小圏に
4月の米ISM製造業景気指数は49.2を記録し、前回結果・市場予想ともに下回る結果となりました。前回3月は17ヶ月ぶりの景気拡大を示しましたが、製造業は再び景気縮小圏に戻る結果となりました。
一方、経済全体では、42.5以上を記録すると一般的に景気拡大とみなされ、今回で48ヶ月連続の景気拡大となりました。
【2】内容・注目点:製造業全体は需要軟化も回復基調。一方で支払価格指数の上昇目立つ
ISM製造業景気指数は、全米供給管理協会が製造業300社以上の仕入れ担当者に生産状況や受注状況、雇用状況等についてアンケート調査を実施し、それを基に製造業全体のセンチメントを指数化した指数です。企業のセンチメントを反映し景気転換の先行指標とされること、また主要指数のなかでは最も早く発表されることから注目が集まります。
今回49.2を記録し、製造業は再び景気縮小圏に戻る結果となりました。各項目を見ると(図表2参照)、総合指数を構成する5要素(新規受注、生産、雇用、入荷遅延、在庫)のうち、新規受注(51.4→49.1)と生産(54.6→51.3)の低下が総合指数低下の主な要因です。新規受注と生産からは需要状況が確認できますが、前回に比べて需要は軟化していることが分かります。
これに対し、ISM製造業調査委員会のフィオーレ委員長は、「需要の改善は鈍化したが、依然として回復の初期段階にあり、状況改善の兆候が続いている」と述べています。また、調査回答者のコメントを見ても、強弱はあるものの需要は改善しつつあることがうかがえます。
一方、支払価格指数は60.9(前月比+5.1)と上昇し、仕入価格の上昇によるインフレ圧力が懸念されます。
業界別でみると、6大製造業の内2つの業界(輸送機器、化学製品)が拡大圏にあり、前月の4つからは減少しましたが、45%を下回った業界の割合(GDP比)は4%のみであったことから、製造業全体としては健全性が確認できます。
【3】所感:粘り強いインフレ懸念、次は雇用統計に注目
FRBが利下げを開始するにあたって懸念しているのは、インフレの再燃・長期化ですが、今回支払価格が上昇したことはコスト価格高騰→消費者価格転嫁→インフレとなる不安材料の一つでしょう。
同日公表されたFOMC声明文では、「2%のインフレ目標に向けてのさらなる進展はみられない」とし、引き続き「インフレ率を2%の目標に戻すことに強く取り組む」姿勢を見せています。
一方、FRBは「物価の安定」とともに「雇用の最大化」の責務も負っています。強すぎるともいえる労働市場が賃金インフレに繋がっている状況であり、また、「労働市場が予想外に弱まれば政策対応が必要になる可能性もある」というパウエル議長の発言もあることから、5月3日(金)の雇用統計の結果に注目です。
フィナンシャル・インテリジェンス部 岡 功祐