円安進行により外国人観光客は過去最高記録を更新

今回は牛肉を中心に食肉関連株について解説したいと思います。円安が進んでいます。4月26日現在、1ドル=155円後半まで米ドル高・円安となりました。これは34年ぶりの水準です。

円安は日本人にとって輸入物価の上昇をもたらします。海外旅行はますます高嶺の花となりつつありますが、日本を訪れる外国人観光客の人たちにとっては朗報です。世界中の品物が格安で手に入るとあって、日本を訪れる外国人観光客は2024年3月、308万人に達しました。単月では過去最高の記録更新です。一家総出で日本の街を歩く外国人ファミリーを見かけることも珍しくなくなりました。

旅行者にとって最大の楽しみは食事です。今も昔も外国人がイメージする日本料理と言えば「鮨、天ぷら、すき焼き」となります。中でも「すき焼き」は、サシのよく入った「霜降り肉」が主役で、その美味しさはほおばった時に口の中に広がる芳香とされています。

この香りは「煮牛肉熟成香(和牛香)」と名付けられており、世界の数ある牛肉の中でも和牛だけに備わる特別な香りです。これは霜降り肉が空気中で数週間、熟成されている間にある種の細菌の作用によってもたらされ、しかる後に100℃以下で加熱された時だけに発生するものです。この香りが食べた人に、少量の肉でも満足感と満腹感をもたらすとされています。

また、「低カロリー高たんぱく」の赤身の焼肉やステーキは、100℃以上加熱することによって「焼牛肉熟成香」と言われる、これまた香ばしい焙焼香気が生成されます。世界中で和牛がもてはやされるのは「日本を訪れなくては食べられない」という特別な理由によるのです。

輸入牛肉が高騰、日本産の牛肉に需要が高まる

その一方、日本では、輸入牛肉が高騰しています。特に米国産を中心とした輸入牛肉は1991年の輸入自由化以降では最も高い値段となっています。円安の影響もありますが、もう1つの理由としては、米国を襲った干ばつの影響が大きいようです。

日本で流通する牛肉の6割は外国産で、うち4割が米国産で占められています。その米国では、牛の飼育が周期的に増えたり減ったりする自然のサイクルがあり、現在は減少期に当たっています。そのタイミングで産地である南部が干ばつの被害に遭い、飼育に必要となる牧草が不足して牛の生産がさらに減少しています。

米国で飼育される牛の総頭数は、2024年1月時点で8700万頭強に減少しています。1951年以来の最も低い水準にあり、酪農家は米国内の消費を優先して、輸出に振り向ける頭数を絞り込んでいます。そのため、日本向けの供給も平年に比べてかなり絞り込まれています。

そこに34年ぶりの円安が重なります。円安が円ベースの輸入価格を押し上げ、米国産バラ肉の卸値は前年比4割高の1キロ当たり1,080円から1,200円まで上昇しました。直近の最も高かった2014年を上回っています。この年も干ばつが大きく影響しました。

輸入牛肉は牛丼チェーンをはじめ、主に外食店で使われているため、安さを売り物にしていた焼肉レストラン、牛丼店は仕入れコストの上昇に大変苦労しています。相次いで値上げを行っていますが、それでも追いつきません。日本でも「インフレ」という言葉を耳にしない日がなくなってきました。

牛丼のように、デフレ時代に安さの象徴とされていた品物がそろって高くなり、それによってこれまで高くて手を出しづらかったモノが安く感じられます。その最たるものが牛肉です(個人的な感想が多分に含まれています)。高嶺花だった和牛に手が届くようになったような気がします。

日本で飼われている牛は、乳用として99%以上がホルスタイン種です。白黒のまだら模様が特徴のホルスタイン種は、泌乳能力が非常に高い種とされており、世界的に最も普及しています。

ホルスタイン種の原産地はオランダ北部、ドイツ北部(ホルスタイン地方)など北海に面した冷涼な地域で、寒さに強い反面、暑さは苦手です。2000年ほど前からずっと人間に飼い慣らされてきました。

日本では北海道大学の前身である札幌農学校が最初に導入したため、今も乳生産の中心は冷涼な北海道です。牛乳を多く生産することが仕事なので、ホルスタイン種は乳房が大きく、体の前半部よりは後半部の方がよく発達しています。

一方で、食肉用の牛は全身に肉がつき、ずんぐりとしています。日本全国で最も多く飼われている品種は黒毛和種で、中国地方の在来種に西洋種を交配して造ったものです。

和牛は筋肉の中に脂肪の入った「霜降り肉」の生産に適しており、この他にも熊本県、高知県の褐毛種、東北北部の南部牛、山口県の無角和種など、それぞれの地方で血統を正しく管理しながら育成されています。日本の主要品種である黒毛和種は、ホルスタイン種よりも耐暑性に勝るとされ、食肉用として大事に飼育されています。それでは、以下に食肉に関連する銘柄を紹介します。

今後の株価好調に期待したい食物関連銘柄4選

スターゼン(8043)

食肉卸の大手。筆頭株主は三井物産(8031)。設立母体は全国畜産協同組合で、ハンバーガー大手のマクドナルド[MCD]向けにパティを納入することで知られる。2012年には高級ハム・ソーセージのローマイヤを子会社化した。北海道、東北、九州を中心とした全国の協力農場とパートナーシップを結び、国産牛、豚の安定供給基盤を構築している。近年深刻化する和牛の飼養農家の戸数減少に対して、飼養農場の共同運営、受精卵研究所を設立。和牛業界の支援・育成にも取組みを強化している。

【図表1】スターゼン(8043)の週足チャート
出所:マネックス証券ウェブサイト(2024年4月26日時点)

S Foods(2292)

米国産牛肉・内臓肉輸入のパイオニア。「こてっちゃん」が看板商品として知られるが、食肉産業の最上流となる家畜の生産から食肉の卸売、食肉加工品の製造を経て、最も下流の食肉の小売・外食まで一貫して手掛けている。1967年に前身である「有限会社スタミナ食品」として創業。2000年に「エスフーズ株式会社」に社名変更。2014年には江崎グリコから食肉加工事業を取得している。米国にも工場を持ち、自社ブランド肉の拡販に力を入れている。2026年度には売上げ5000億円超、経常利益200億円超を目指す中期経営計画を実行中。

【図表2】S Foods(2292)の週足チャート
出所:マネックス証券ウェブサイト(2024年4月26日時点)

伊藤ハム米久ホールディングス(2296)

伊藤ハムと米久の経営統合で2016年に誕生した持株会社。食肉で国内第2位、ハム・ソーセージではトップを誇る。筆頭株主は三菱商事(8058)。子会社のサンキョーミートは国内トップクラスの和牛輸出処理施設を有する。現在は世界48ヶ国・地域への輸出認可を取得。その販売網を活かして和牛の輸出促進を図る。大阪大学大学院、島津製作所(7701)、TOPPANホールディングス(7911)、シグマクシス・ホールディングス(6088)とは「培養肉未来創造コンソーシアム」を設立。大豆ミート食品「まるでお肉」を製品化済み。世界に先駆けて培養肉の食用化の実現を目指す。

【図表3】伊藤ハム米久ホールディングス(2296)の週足チャート
出所:マネックス証券ウェブサイト(2024年4月26日時点)

ラクト・ジャパン(3139)

「東食」(1997年に会社更生法を申請)の社員が設立した乳製品専門の商社。加工販売も手掛け、チーズ、ヨーグルト、アイスクリームなど乳製品の取扱高では圧倒的なシェアを有する。2005年からは豚肉を中心に牛肉、鶏肉など食肉部門にも参入。生ハム、サラミ、ベーコン、畜産加工品も手掛けている。創業25周年の2023年に10年の長期事業計画「LACTO VISION 2032」を策定。2032年には乳製品取扱高45万トン、経常利益60億円(いずれも現在の約2倍)を目指している。

【図表4】ラクト・ジャパン(3139)の週足チャート
出所:マネックス証券ウェブサイト(2024年4月26日時点)

参考文献:『畜産と気象』(2010年、成山堂書店)