155円台を目指す勢いの米ドル/円相場、上昇は続くのか

米ドル/円相場は155円台を目指す展開となっています。為替介入はいつ入っても不思議ではありません。しかし、米国では利下げ開始時期が先送りされ、必要なのは利下げではなく、むしろ利上げではないかという考察が出てくる相場環境で米ドル売り円買い介入を行っても焼け石に水、効果は限定的だとの指摘もあります。

新NISAでの個人の外貨建て資産への投資、米テック企業へのサブスクリプションの米ドル払いによるデジタル赤字の拡大など、構造的変化が円安トレンドを長期化させるとした見方も定着しつつあります。米ドル/円相場は、このまま円安がさらに進行するのでしょうか。

財務省と経産省が共通して抱える問題意識

このところ、為替市場への牽制発言で注目される財務省の神田財務官ですが、日本経済の構造課題を議論する懇談会を立ち上げたことが話題となっています。第1回目の開催となった3月26日、「日本企業が対外直接投資を積極的に進める一方で、投資収益の半分が現地で再投資されて日本に戻ってこない点」などの論点が提示されたと報じられています。

また、経産省は政府が6月にもまとめる骨太の方針に「企業が世界で稼いだ利益を国内に還元させるため、研究開発などの本社機能を国内で強化する」ことを柱の1つに据えて策定すると報じられており、財務省と経産省が共通の問題意識を共有していることが窺えます。

2023年の日本の経常収支は20.6兆円の黒字。前年比92.5%の増加となりました。通常、黒字国の通貨は強いというのがセオリーですが、財務省・経産省が問題提起しているように多くの日本企業は外貨を国内に還流させず海外で再投資しており、円高圧力とはなっていないのが実情です。

6月発表の経済財政政策によっては、日本でもレパトリ減税が導入される可能性も

ここで思い出されるのが、米国ブッシュ政権が2005年に実施した「レパトリ減税」。海外子会社の利益(外貨)を国内に還流させる際の税率を1年限りの期間限定で35%から5.25%に引き下げました。これを機に米国へのレパトリエーション(資金還流)が起こって米ドルが全面高となり、米ドル/円相場は2004年末の103円台から118円台に円安が進行しました。

もし、日本でもこのレパトリ減税が導入されたらどうなるのでしょうか。6月に発表される骨太の方針「経済財政運営と改革の基本方針」にレパトリ減税が盛り込まれれば、企業はこれを機に海外資産を円に戻すのではないでしょうか。日米金利差が縮小しない中にあっても、為替市場へのインパクトはかなり大きくなると考えられます。