良い介護を行うために家族の間で知っておくべき8つのタイプとは?
2015年に私が書いた書籍『医者には書けない!認知症介護を後悔しないための54の心得』(廣済堂出版)の中で、親の介護をする家族を8つのタイプに分類しました。
分類に用いた項目は、「お金」「口」「時間」の3つです。「お金」は介護費用を出せるかどうか、「口」は親の介護に対して意見をするかどうか、「時間」は親の介護に時間を割けるかどうかという意味です。この3項目に〇と×をつけ、下表のように分類しました。
この話を書籍に書いた理由は、親の介護の悩みよりも、介護の方針をめぐって、きょうだいや親族と衝突して悩んでいる介護者のほうが多かったからです。家族で介護をするうえで、それぞれのタイプを理解できれば、こうした衝突を割けられるかもしれないと考えました。
まずは、8つのタイプの特徴についてご紹介します。
タイプ1:無関心型
無関心型は、親の介護に一切関わりません。介護費用は出さないし、介護に口を挟まず、介護の手伝いもしません。
介護をしている家族からすれば、少しは手伝って欲しいと思いますし、親に関心を寄せて欲しいとも思います。しかし、あれこれ口を出して、介護をかき回す家族もいるので、何もしない方がかえって良い場合もあります。
タイプ2:お金解決型
お金解決型は、親の介護費用を工面するスポンサーの役割を果たします。例えば、親と離れて暮らしていてなかなか会いに行けず、介護の手伝いもできないため、せめてお金で貢献しようとするケースです。
介護保険サービスの利用や介護施設費用などのお金がかかり、終わりも見えないので、どれくらいお金が必要になるか分かりません。「お金だけ出して、介護は一切やらない」と他の家族・親族から非難されることもありますが、大切な立場です。
タイプ3:口だけ型
口だけ型は、親の介護に口は出しますが、介護はやらないし、介護費用も出しません。例えば、下記のようなことは言うのに介護はやらないので、介護している家族は振り回されてしまいます。
「お母さんを介護施設に預けるなんて、かわいそうだ」
「ヘルパーなんて必要ない、家族だけで介護すればいいでしょ」
タイプ4:同居型
同居型は、介護が必要な親のそばに居る家族で、寄り添うことが主です。介護については、ケアマネジャーとやり取りをする家族側の窓口であるキーパーソンの方針に従います。高齢の夫を介護している高齢の妻のような、老老介護をしている場合などがこの型にあたります。
タイプ5:お札振りかざし型
お札振りかざし型は、自分が介護費用を出しているからと、介護の方針にも口を出します。でも、介護は一切やりません。例えば下記のようなことを言い、他の家族を困らせます。
「もっといい介護施設があるのでは?」
「認知症の新薬が出たから、それを使ったほうが良いのでは?」
タイプ6:ボランティア型
ボランティア型は親の介護に参加しながら、キーパーソンに対して意見やアドバイスを積極的に行います。お金の面では貢献できませんが、介護に対して手を動かしてサポートしてくれます。
タイプ7:サポーター型
サポーター型は介護費用を出し、親の介護にも参加します。しかし介護の方針は、キーパーソンに一任し、あれこれ口を出しません。
タイプ8:主介護者型
自ら介護費用を出し、介護にも積極的に参加するのが主介護型です。親の状態を1番理解しているので、キーパーソンとして、介護のプロである地域包括支援センターやケアマネジャー、かかりつけ医とのやり取りが頻繁に発生します。
親の介護に向いているのはどのタイプか?
主介護者型がキーパーソンになり、他のきょうだいや親族はサポーター型やボランティア型になれば、親の介護はうまく回ると思います。キーパーソンがしっかりしていれば、介護の質は向上し、親が元気で過ごせる期間は長くなるはずです。
一方で口だけ型、お札振りかざし型の家族がいると、家族間の調整に疲弊し、注力すべき介護の本筋に力を割けなくなります。その場合は、あえて無関心型になるように誘導するのも1つです。自分自身の介護負荷は増えますが、調整に伴う精神的なストレスは減らせます。
口だけ型の中には、介護保険制度の情報を提供したり、介護施設の口コミを集めたりなど、情報収集能力の高さで、親の介護をサポートできる場合もあります。また、お金解決型も、最初から役割分担が明確になっていれば、お金の面でサポートできます。
親の近くで手を動かしている人だけが、介護をやっている人と思いがちですが、貢献・サポートの仕方はいろいろです。介護全体をプロジェクトと考え、家族それぞれの得意分野を生かして、自分の役割を果たせれば、良い介護になると思います。