業種のバランス考慮したダウ

NYダウの4万ドル突破は米国経済の強さと懐の深さを象徴する出来事だと思います。短期的に勢いのある銘柄だけを選定せず、業種のバランスを考慮したNYダウが4万ドルを突破したのは画期的です。

米国市場を代表する株価指数としてNYダウとよく比較されるS&P500は組入銘柄の上位にテック銘柄が並び、マイクロソフト[MSFT]とアップル[AAPL]に次ぐ第3位には株価高騰で時価総額が急増した半導体のエヌビディア[NVDA]が入っています。エヌビディアは好業績を通じて日経平均を間接的に押し上げたとも言われています。

ウォルマート[WMT]、マクドナルド[MCD]、コカコーラ[KO]も

翻ってNYダウの構成銘柄をみると、半導体銘柄として採用されているのはエヌビディアではなくインテル[INTC]です。インテルは半導体市況の悪化を受け、現状では業績でも苦戦していますが、長年にわたり米国の半導体セクターを牽引してきた実績は誰もが認めています。

NYダウの構成銘柄にはこのほか、ウォルマート[WMT]、プロクター・アンド・ギャンブル[PG]、マクドナルド[MCD]、コカコーラ[KO]、ナイキ[NKE]、キャタピラー[CAT]など国際的にも知名度が高いナショナルブランドが並んでいます。時代の波に容易に流されることなく、揺るぎない価値を持った銘柄群という印象です。

米国経済の競争力の源泉はもちろん絶え間ないイノベーションであり、S&P500のウエイト上位にランクされるようなテック企業が株式市場の牽引役となっています。ただ、実生活では誰もがテスラ[TSLA]の電気自動車(EV)を購入しているわけではなく、米国内での2023年の新車販売台数はフォード・モーター[F]※のガソリン車・ディーゼル車がテスラのEVを大きく上回っているのが実情です。

NYダウは銘柄選びの基準があいまいで、ときに「恣意的」や「古臭い」といった批判を浴びることもありますが、生活者の肌感覚に近い銘柄の集まりと言えるのかもしれません。生活に根ざした等身大の米国経済の動向を映すのであれば4万ドル突破はやはり経済の懐の深さを示していると思います。

2024年2月にはアマゾン・ドットコム[AMZN]がNYダウの構成銘柄に採用されました。アマゾンはすでに生活に不可欠なサービスを提供しており、違和感はなさそうです。マイクロソフトとアップルを合わせたテック銘柄の存在感が高まると予想されていますが、これもまた大きな時間軸で経済動向の変化を着実に反映していると言えそうです。

※フォードはNYダウの構成銘柄ではありません。