先週の上海総合指数と深セン総合指数、創業版指数はそろって小幅上昇となりました。しかし、大型株は弱く、小型株が強い流れは続いており、創業版指数は週央で年初来高値を更新しています。先週のニュースの中でも最もインパクトが大きかったのは7月25日(木)に工業情報化部が、国有企業中心に、製鉄、銅、セメント、化学品など19産業、合計1,400を超える生産効率の悪い古い設備を持つ企業に対して生産能力の段階的縮小を命じたことです。具体的には古い設備については2013年9月末までに生産停止、2013年末までに廃棄処分をしなくてはなりません。対象企業には上場企業も指定されており、このことで今週は原油や銅の価格も下落しています。

何度か指摘していますが、習近平主席就任以来、中国から発せられるシグナルは「緊縮、倹約、スローダウン」です。共産主義国なので、米国のように市場に迎合、対話をしながら政策を決めていく必要はないのかもしれませんが、株価にはマイナスです。しかしその一方で、先週は李克強首相が7%超の経済成長は維持しなければならず、これが政府の容認できる下限だとコメント。また、政府が容認できる物価上昇率は3.5%であるとも付け加えました。中国は2020年までにGDPを2010年の2倍にする政府目標を立てており、そのためには年間で6.9%以上のGDP成長が必要です。今回の李克強首相のコメントでGDP成長率が7%を下回って初めて景気刺激策が出てくる認識が出来つつあります。

一方で、先週のハンセン指数は上昇しました。前述の李克強首相のコメントが、香港では中国政府が中国経済のハードランディングは許容できないという姿勢を示したと理解され中国関連株を中心に、発表のあった23日に上昇しました。しかしその後は横ばいとなり、まだ力強さを感じさせるほどではありません。いずれにしても中国政府が景気刺激策を出す可能性が低い以上、当面は中国を代表する大型株は調整局面が続く一方で、株価が好調な銘柄は引き続き強いという状況が続くのではないでしょうか。現在、株価が強い銘柄には、テンセント(00700)、キングソフト(03888)といった中国政府の政策に影響を受けにくく高成長を続けているインターネット業界で強い力を持つ銘柄や、中国興業太陽能技術(00750)、中国光大国際(00257)といった環境関連銘柄、中国生物製薬(01177)、華南城(01668)のような独自の強みを持つ銘柄などがあります。

コラム執筆:戸松信博