モトリーフール米国本社、2024年1月23日 投稿記事より

主なポイント

・エヌビディアはAI向けチップの市場リーダーであり、ネットワーク機器、ソフトウェア、サービスといった隣接領域を提供する能力が強力な競争優位性となっている
・アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)は圧倒的な地位を占めるクラウドコンピューティングプラットフォームであり、AI開発者向けサービスのリーダーとしての地位が、市場シェア拡大の土台となっている
・データドッグはオブザーバビリティ・ソフトウェアで強い存在感を示しており、最近では、生成AIアプリケーション向けの新たなパフォーマンス監視ソリューションを発表した

AIがより浸透するにつれて、投資家に利益をもたらすかもしれないグロース銘柄は

市場調査会社グランド・ビュー・リサーチの予測によると、ハードウェア、ソフトウェア、サービスを含む人工知能(AI)関連支出は、2030年にかけて年率37%のペースで増加する見通しです。これは、投資家にとっても大きな機会であることを意味します。企業は予測的洞察と自動化によって、生産性を向上させようと競い合っており、こうした継続的トレンドが2024年以降、多くの企業の株価を押し上げるとみられます。

このトレンドに乗じる賢明な方法とは、複数のAI関連銘柄で構成されるバスケットを構築することではないでしょうか。このバスケットに含める候補の3銘柄、エヌビディア[NVDA]、アマゾン・ドットコム[AMZN]、データドッグ[DDOG]について紹介します。

エヌビディア[NVDA]:あらゆるレイヤーに対応するフルスタックAI

半導体企業であるエヌビディアの画像処理装置(GPU)は、AIアプリケーションのような、データセンターの複雑なワークロードを動かすのに不可欠です。エヌビディアは、トレーニングや推論に使われる機械学習ハードウェア、ソフトウェア、サービスのパフォーマンスを測る業界のベンチマークである「MLPerf」で、常にトップクラスのスコアを獲得しています。また、アナリストによると、同社はAIや機械学習向けチップで80%を超える市場シェアを維持しています。

しかし、同社の真の素晴らしさは、フルスタック戦略にあります。詳しく説明すると、エヌビディアはデータセンター向けハードウェアのポートフォリオを拡充しており、AI向けに特化したネットワーク機器や中央演算処理装置(CPU)は、どちらも数十億ドル規模の事業に成長しています。また、AIアプリケーションの開発を簡素化するためのサブスクリプション・ソフトウェアやクラウドサービスにも事業を拡張しており、こちらも10億ドル規模の事業となっています。

経営陣は、隣接するこれら3領域(ネットワーク機器、CPU、ソフトウェアおよびサービス)について、AI関連収益を増加させる重要な成長ドライバーであると見ています。さらに、AIのあらゆるレイヤー(インフラ、ソフトウェア、サービス)に対応した製品を手掛けていることから、多くの企業にとってエヌビディアの魅力はますます増しています。そのため、CFRAリサーチのアナリストであるアンジェロ・ジーノ氏は、エヌビディアの「フルスタックのAI/ソフトウェア能力は、かなりの競争優位性となっている」と述べています。

グランド・ビュー・リサーチは、GPU市場が2030年にかけて年率約28%で成長すると予想しています。他のAI支出カテゴリーの成長と合わせると、この追い風によってエヌビディアは年率25%を上回る売上成長が見込まれ、それを踏まえると、足元の株価売上が高倍率の(PSR)30.9倍であることも許容範囲なのかもしれません。

このバリュエーションは過去3年間の平均値であるPSR 23.5倍に対して割高ですが、5年程度の長期的視点を持つ投資家であれば、検討する価値はあるかもしれません。当面の間、エヌビディアは割高なバリュエーションが見込まれます。

アマゾン・ドットコム[AMZN]:最大クラウドインフラAWSでのAI収益化

アマゾン・ドットコムは北米および西ヨーロッパで最大のEコマース・マーケットプレイスを運営し、今や世界第3位のアドテック企業でもあります。同社は両事業でAIを活用し、効率性と収益性の向上を図っています。例えば、機械学習モデルを使って在庫と物流ルートを最適化していたり、最近では、ブランドのマーケティング・コンテンツ作成を支援する生成AIツールの発表もしています。

しかし、アマゾン・ドットコムがAIを収益化する最大の機会は、同社が圧倒的な地位を占めるクラウドコンピューティングにあります。実際、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)は直近四半期に、クラウドインフラ/プラットフォームサービス市場全体で32%のシェアを占めました。第2位はマイクロソフト[MSFT]のAzureで、市場シェアは23%でした。つまり、AWSはクラウドプロバイダーとして、AIを導入しようとする企業をサポートするのに最も有利な位置に付けているということです。そして、AI開発者向けクラウドサービスのリーダーとしての地位が、その信頼性をさらに裏付けています。

その上、AWSは新しい生成AI製品を次々と発表しています。Amazon Bedrockは、生成AIアプリケーションの開発をサポートするクラウドサービスです。Code Whispererは、AIを搭載したソフトウェア開発者向けコパイロットです。さらに、Amazon Qは生成AIによるビジネスアシスタントで、マイクロソフトやセールスフォース・ドットコム[CRM]といった他社製品を含む、さまざまなシステムやデータソースにわたって、タスクを自動化し、具体的な洞察を示します。

このような背景の下、モーニングスターのアナリストは、特に好調なデジタル広告とクラウドコンピューティングが牽引し、アマゾン・ドットコムの売上高が2027年にかけて年率11%で成長すると予想しています。同社の過去3年間の平均PSRが3倍であることを考えると、この予想に基づくPSR2.8倍という足元のバリュエーションは妥当かもしれません。

データドッグ[DDOG]:IT環境のAI番犬、モニタリング監視ソフトへの追い風

データドッグは、オブザーバビリティ(可観測性)やサイバーセキュリティといったソフトウェアのプロバイダーであり、企業がITインフラを監視し、パフォーマンス問題を解決するのをサポートしています。同社のプラットフォームはAIを活用し、洞察の可視化、異常の検知、根本的な原因解析の自動化を実現します。同社はアプリケーションのパフォーマンス監視、ログモニタリング、ITオペレーション向けAIといった複数のソフトウェア分野において、リーダーとして認められています。

IT環境が複雑化するにつれて、オブザーバビリティ・ソフトウェアはますます不可欠になっています。これは、クラウド移行やAI導入といったデジタルトランスフォーメーション(DX)プロジェクトが、データドッグにとって追い風であることを意味します。しかし、同社には、AIを収益化する能力を一段と強化する2つの新製品があります。

1つ目のLLM Observabilityは、生成AIアプリケーションとそれを支える大規模言語モデル(LLM)向けのパフォーマンス監視ソリューションです。2つ目のBits AIは、開発チームや運用チームが問題を迅速に調査し、解決するための会話型コパイロットです。

データドッグは、獲得可能な最大市場規模が年率11%で成長し、2026年には620億ドルに達すると予想していますが、同社はもっと急速に成長するとみられます。ウルフ・リサーチのアナリストであるアレックス・ズーキン氏は、生成AIブームがさらに広がるにつれて、データドッグが「最も急成長するソフトウェア企業」になるとみています。ウォール街のコンセンサスも、データドッグの売上高が今後5年間で年率26%増加すると予想しています。この予想に基づく足元のPSR20.6倍は妥当であるだろうと思われます。

免責事項と開示事項 記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。アマゾン・ドットコムの子会社であるホールフーズ・マーケット元CEOのJohn Mackeyは、モトリーフール米国本社の取締役会メンバーです。元記事の筆者Trevor Jennewineは、アマゾン・ドットコム、エヌビディアの株式を保有しています。モトリーフール米国本社はアマゾン・ドットコム、データドッグ、マイクロソフト、エヌビディア、セールスフォース・ドットコムの株式を保有し、推奨しています。モトリーフールは情報開示方針を定めています。