コロナ禍からの回復、インバウンドなど、好循環を生み出しているラーメン業界

ラーメン専門店を運営する上場企業を軸に、ラーメン業界の業績が好調だ。新型コロナウイルス感染症からの回復、国内経済のデフレからの脱却、さらにはインバウンド(訪日外国人)の再流入などが要因となっている。これらの要因は百貨店やドラッグストア、ホテルなども同じだが、中でもラーメン業界は他の要因も追い風となっているようだ。

観光庁の訪日外国人消費動向調査(2023年7~9月期)によれば、訪日客が日本滞在中に行ったことでは「日本食を食べること」が首位を占めた。その内訳で「1番満足した飲食」(単一回答)は「ラーメン」が18.8%だった。肉料理の32.2%より低いが、寿司の14.9%を抑えている。肉料理はすき焼き、焼き肉、焼き鳥など多岐にわたるため、ラーメンの健闘ぶりが目立つ。

海外でラーメン人気を押し上げた立役者は「一風堂」と言われている。2008年にNYのマンハッタンにIPPUDO NYがオープン。現地の新聞に「わずか13ドルで飛ぶ日本への旅」と報じられた。一風堂と言えばとんこつラーメン。日本では醤油やみそ、塩味などもあるが、欧米では「ポーク or ノット・ポーク」(とんこつか、それ以外)と言われるほど、とんこつが一般的になっている。

海外でも日本式のラーメンが定着しつつあるが、実際に日本に行った際に、食べてみたいという訪日客が増加している他、日本のアニメや映画でもラーメンを食べるシーンが出てくることも後押し要因になっている面があるようだ。

ラーメン店にとっては、水道光熱費の上昇、円安影響も含めた原材料高、人手不足(人件費の高騰)は逆風になっているはずだが、業績はこれらをこなして快調に推移している。値上げが順調に進んでいる他、インバウンド客から見れば、円安で価格に値ごろ感があることが要因と見られる。

今後の成長路線に注目したいラーメン関連銘柄5選

ここからは、今後注目したいラーメン関連銘柄をピックアップする。

魁力(かいりき)屋(5891)

2023年12月15日に東京スタンダード市場に新規上場。初値は公開価格1,400円を上回る1,822円。「京都背脂醤油ラーメン」を主力商品とする「京都北白川ラーメン魁力屋」を運営している。

また、郊外ロードサイドや商業施設内のフードコートを軸に130店舗(2023年9月末現在)を展開。醤油と鶏ガラスープをベースに豚の背脂を落としたラーメンに定評があり、接客の良いラーメン店を標榜している。2023年12月期は売上高103億8100万円(前年比18%増)、営業利益6億200万円(同58%増)を計画している。

【図表1】週足チャート
出所:マネックス証券ウェブサイト(2024年1月18日時点)

丸千代山岡家(3399)

北海道と北関東を地盤に、ラーメン専門店「ラーメン山岡家」をチェーン展開している。セントラルキッチンを持たず、各店舗でスープを仕込んでいる。主要国道沿いの大型駐車場を併設した店舗が軸となっており、リピーターの多さに強みがある。醤油、みそ、塩、とんこつと幅広いラインナップを持つ。

2024年1月期は売上高255億円(前期比37%増)、営業利益18億円(同3.5倍)を見込む。営業利益は第3四半期決算時点で8億円の増額。価格改定やコスト管理、業務効率化などが奏功している。

【図表2】週足チャート
出所:マネックス証券ウェブサイト(2024年1月18日時点)

ギフトホールディングス(9279)

とんこつ醤油をベースに、中太麺が特徴の横浜家系ラーメン「町田商店」を展開。ラーメン店直営事業に加え、プロデュース事業も手掛けている。直営事業では米ニューヨーク、ロサンゼルスの海外にも進出。2023年12月にベトナム店をオープンした。プロデュース事業はオーナーと契約し、たれやスープなどを継続購入契約するビジネスモデルで、現在合計745店舗を展開している。

2024年10月期は売上高276億円(前期比20%増)、営業利益27億円(同15%増)の見込み。前期は1月、7月に値上げを実施するも、客数は減少していない。2023年10月は新型コロナウイルス前の2019年比で13.5%増となっており、店舗改装も進めている。今期の新規出店は計87店舗と積極的な計画を推進。

【図表3】週足チャート
出所:マネックス証券ウェブサイト(2024年1月18日時点)

力の源ホールディングス(3561)

博多ラーメン店「一風堂」を軸に展開。海外展開を強化しており、第2四半期末時点で全279店舗のうち、海外は137店舗と約半分を占める。

2024年3月期は売上高315億円(前期比21%増)、営業利益31億円(同31億円)を計画している。営業利益は期初予想から5億6000万円の増額修正。インバウンドの回復に加え、価格改定効果、DX施策などで収益性が改善したことが要因とされている。海外の1~6月期既存店売上高は前年同期比29%増と快走。インドネシア、パリ、台湾などに新規出店している。

【図表4】週足チャート
出所:マネックス証券ウェブサイト(2024年1月18日時点)

物語コーポレーション(3097)

焼き肉の食べ放題店「焼肉きんぐ」が主力だが、ラーメン専門店「丸源ラーメン」も展開している。ラーメン部門の2023年11月期の月次売上高は前年同月比18%増と快走。3種類をブレンドしたこだわりの醤油などを特色とする「肉そば」が主力商品になっている。湯切りを機械で行うなど、業務の効率化も進めている。

【図表5】週足チャート
出所:マネックス証券ウェブサイト(2024年1月18日時点)