モトリーフール米国本社、2024年1月8日 投稿記事より

主なポイント

・マイクロソフトは、市場をリードする自社製品のワークフローを自動化できる生成AIを活用した「Copilot」をリリース
・クラウドコンピューティングのリーダーはアマゾン・ドットコムだが、マイクロソフトはAIインフラと開発者向けサービスを強みに、着実に市場シェアを伸ばしている
・マイクロソフトはChatGPTを生み出したオープンAIと独占的パートナーシップを結んでおり、より多くの企業が生成AIを採用するにつれて、重要な追い風となる可能性がある

マイクロソフトはクラウドサービスとソフトウェアを通じて、人工知能(AI)から莫大な収益が見込まれる

ブルームバーグの予想によると、生成AIの市場規模は年率42%のペースで成長し、2032年には1兆3,000億ドルに達する見通しです。そうした中、機械学習プロセッサーで主導権を握るエヌビディア[NVDA]が恩恵を受ける絶好のポジションにいると考えている投資家は多いことでしょう。ところが、ウォール街の一部のアナリストは、マイクロソフト[MSFT]が幅広いインフラやソフトウェア製品を通じてAIから莫大な収益が見込まれ、最大の勝者になるかもしれないと見ています。

実際、CFRAリサーチのアナリスト、アンジェロ・ジノ氏は先日リサーチレポートに、「マイクロソフトが幅広い製品やサービス、そして価格決定力により、生成AIから収益を得る最も有利なポジションにいる」と書きました。具体的には、クラウドサービス、各種ソフトウェアの「Copilot」シリーズ、オープンAIの大規模言語モデルなどが、AI関連の主な収入源として、将来的に期待されるだろうとのことです。

同様に、モルガン・スタンレー[MS]のアナリスト、キース・ワイス氏も、マイクロソフトが「インフラと各種アプリを通じて生成AIを収益化する最高の位置にいる」と見ています。さらに先日、オッペンハイマーのアナリスト、ティモシー・ホラン氏は「マイクロソフトは最高のAIインフラと大規模言語モデルを持つことで、独自の地位を築いている」と指摘しました。

マイクロソフトについて押さえておくべき2つの重要ポイント

マイクロソフトは企業向けソフトウェア市場のリーダーである

マイクロソフトは、企業向けソフトウェアの複数のカテゴリーで強力な地位を築いています。主な例を挙げると、統合コミュニケーションプラットフォームのMicrosoft Teams、エンタープライズリソースプランニング(ERP)プラットフォームのMicrosoft Dynamics、オフィス向け生産性向上ソフトウェアシリーズのMicrosoft 365は、いずれもそれぞれの分野で主力のソリューションです。

上記に挙げたものは、ほんの一例にすぎません。例えば、Microsoft Power BIは、ビジネスインテリジェンスソフトウェアにおいてトップの座を占めていますし、他にも、企業のエンドポイントセキュリティなど、サイバーセキュリティソフトウェアの複数の分野においてもマイクロソフトはリーダー的存在です。要するに、マイクロソフトには巨大な顧客基盤があるということです。

実際に、サービスとしてのソフトウェア(SaaS)市場全体のうち、マイクロソフトは16%超を占めており、第2位のセールスフォース・ドットコム[CRM]の2倍近いシェアを握っています。これは、マイクロソフトがAIから収益を得る最高の位置に付けているソフトウェア企業であるという考えを裏付けており、同社は新たなCopilotシリーズを通じて、この機会に賭けています。

Microsoft 365 Copilotは、オフィス向け生産性向上アプリケーションのワークフローを自動化する生成AIアシスタントです。Wordで文章の下書きや書き直しをしてくれたり、PowerPointでコンテンツやプレゼンテーションを作成してくれたり、Excelでデータの整理や分析をしてくれたり、Teamsで会話の内容を要約してくれます。Microsoft 365 Copilotは、2023年11月に一般提供が開始されました。

マイクロソフトは他のソフトウェア製品でも、同様の取り組みを行っています。例えば、Dynamics 365 Copilotは販売、マーケティング、カスタマーサービス、サプライチェーン管理にわたるワークフローを自動化します。また、Security Copilotは、さまざまなサイバーセキュリティソフトウェア製品のワークフローを自動化します。

こうした生成AIアシスタントは、最終的にマイクロソフトが市場をリードする企業向けソフトウェアから、より多くの収益を得るのに役立つはずです。

マイクロソフトはクラウドコンピューティングで確固たる地位を築いている

マイクロソフトはまた、クラウドコンピューティング・プラットフォームにおいてもAIから収益を得る好位置に付けています。同社のクラウドサービスAzureは、2023年第3四半期にクラウドインフラ/プラットフォーム市場全体の23%のシェアを確保し、アマゾン・ドットコム[AMZN]のAmazon Web Services(AWS)に次ぐ第2位でした。しかも、AzureはAIインフラと開発者向けサービスを強みに、過去5年間に市場シェアを着実に伸ばしています。

実際、マイクロソフトのサティア・ナデラCEOは、Azureが「トレーニングと推論の両方において最高のAIインフラ」を持っていると述べています。ナデラCEOはまた、オープンAIとの独占的パートナーシップによって、マイクロソフトはクラウドベースのAIサービスにおける市場リーダーとしての地位を確立したと考えています。

オープンAIとの提携により、マイクロソフトはオープンAIのすべてのワークロードの独占クラウドプロバイダーとなっており、これは、Azureインフラ上で動作するChatGPTから、マイクロソフトに収益がもたらされることを意味します。マイクロソフトはさらに、オープンAIの機械学習モデルへのアクセスを提供する唯一のクラウドプロバイダーでもあります。企業は、ChatGPTを動かすGPTモデルを含むこれらのモデルを利用して、独自の生成AIアプリケーションを構築することができます。

これにより、将来的に多くの顧客がAzureに引き寄せられる可能性があり、マイクロソフトはアマゾン・ドットコムから市場シェアをさらに奪うことができるかもしれません。いずれにせよ、ジェイピー・モルガン・チェース[JPM]のアナリストは、「数年前に始まったマイクロソフトのオープンAIへの投資は、これまでに同社が投じた中で最高の投資の1つとなる可能性がある」との見解を示しています。

マイクロソフトは2030年にかけて10%台前半の売上成長を達成する可能性

まとめると、マイクロソフトは企業向けソフトウェアとクラウドコンピューティングで力強い存在感を示しています。また、AIを活用することで、両セグメントにおいて既存製品の改善や新たな収入源の開拓に取り組んでいます。

この点を踏まえ、企業のSaaS支出は2030年にかけて年率13.7%、クラウド支出は同期間に同14.1%の成長が予想されています。つまり、マイクロソフトは2030年にかけて10%台前半の売上成長を達成する可能性が高く、利益についても同程度の成長が期待できるということです。

実のところ、ウォール街のコンセンサスでは、向こう3~5年間にマイクロソフトの1株当たり利益(EPS)は年率14.6%の伸びが予想されています。足元の株価収益率(PER)は35.6倍と、過去3年間の平均32.2倍に比べて割高となっていますが、この予想に基づくと、このバリュエーションは許容範囲と言えるかもしれません。辛抱強い投資家であれば、投資を検討する価値があると思われます。

AI関連銘柄は、分散投資を検討するのが賢明か

注意点として、確かに一部のアナリストは、マイクロソフトが最高のAI銘柄であるとの見方を表明していますが、すべての資金を1社に投資するのは得策ではありません。AI銘柄で構成されるバスケット(ポートフォリオ)を構築するのが賢明な戦略でしょう。そのバスケットにマイクロソフトも入れると良いと思われますが、時価総額2兆7,000億ドルの巨大企業であるため、より小規模な別のAI銘柄の方が上昇余地は大きいかもしれません。

免責事項と開示事項 記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。ジェイピー・モルガン・チェースは、モトリーフールのグループ会社アセントの広告パートナーです。アマゾン・ドットコムの子会社であるホールフーズ・マーケット元CEOのJohn Mackeyは、モトリーフール米国本社の取締役会メンバーです。元記事の筆者Trevor Jennewineは、アマゾン・ドットコム、エヌビディアの株式を保有しています。モトリーフール米国本社はアマゾン・ドットコム、ジェイピー・モルガン・チェース、マイクロソフト、エヌビディア、セールスフォース・ドットコムの株式を保有し、推奨しています。モトリーフールは情報開示方針を定めています。