加齢によるもの忘れと認知症によるもの忘れの違い

新型コロナウイルスの5類移行後、初めての正月を迎えることになった2024年は、ふるさとへ帰省された方も多いと思います。久しぶりに会った親との会話で、名前が出てこなかったり、同じ話を何度も繰り返したりする姿などを見て、不安に思った方もいるかもしれません。

加齢によるもの忘れは、体験したこと自体は覚えています。また、ヒントがあれば、体験した事実を思い出せます。しかし認知症になると、体験したこと自体を忘れてしまいます。例えば食事をしたのに、食事をしていないと言うケースなどです。

加齢によるもの忘れと、認知症によるもの忘れの1番の違いは、日常生活に支障が出ているかどうかです。認知症によるもの忘れの場合、家電の操作方法が分からなくなったり、約束をすっぽかしたりするなど、生活に影響が出ます。

もの忘れとの違いを踏まえたうえで、年始にこそ確認できる認知症のサインをご紹介します。

年賀状の管理には認知症のサインが現れやすい

年始は、親せきや友人などから年賀状を受け取ったり、返事をしたりする時期です。年賀状のやりとりをきちんとするためには、下記の情報を理解していないといけません。

・その年の干支を理解しているか?
・いつも年賀状を出す人と、出さない人の区別はできているか?
・差し出す相手の住所のデータがどこにあるかを理解しているか?
・差し出す相手との出来事を思い出して、きちんと文章で表現できているか?
・年賀状を出し終わっているのに、2通目の年賀状を書いていないか?

年賀状は1年に1度しか書かないので、多くのことを思い出す必要があります。そのため、認知症のサインが現れやすいのです。

もし親が認知症かもしれないと不安に感じている方は、親子で年賀状のやりとりを始めるのもよいと思います。きちんと年賀状が届くようなら、安心でしょう。わが家の場合、筆まめだった母から、年賀状が突然来なくなりました。今思い返すと、認知症のサインだったと考えられます。

親の言動の変化より家の中の変化を探る

家では認知症の症状が出ているのに、医師の前ではしっかり受け答えをして症状が出ないケースがよくあります。これと同じ状況が、ふるさとへの帰省中にも起こります。

親は久しぶりに会う子どもの前ではしっかりしようとするので、いつもの認知症の症状が出ずに、子も気づかない場合があります。認知症のサインを見逃さないよう、親の言動ではなく、親が暮らす家の状態に注目しましょう。わが家では、次のような変化がありました。

・ひとり暮らしなのにクリープが9本も置いてあった。
・冷蔵庫の中に賞味期限の切れた食材がいくつもあった。
・小屋の中に燃えるゴミが大量に保管されていた。
・壁に掛けてあるカレンダーが半年前のままだった。

会話はその場で取り繕いができますが、家の状態は取り繕いができません。家の中はそのままの状態で残っていることが多いので、おかしなところがないかを探してみましょう。

認知症を疑った場合にも病院へ連れて行くのは簡単ではない

認知症を早期に発見し、治療や適切な介護につなげられれば、進行スピードを遅らせることも可能だと言われています。

しかし、親を病院へ連れて行くのは、簡単ではありません。なぜなら親自身は、自分が認知症とは思っていないからです。年を取れば誰でも忘れっぽくなるので、自分も同じだと考えてしまうのです。

一方の子も、親の認知症をなかなか受け入れられません。一時的なもの忘れで、少し様子を見れば、いつもの親に戻るかもしれないと考え、通院を先送りしてしまうのです。

公益社団法人認知症の人と家族の会が2014年に行った「認知症の診断と治療に関するアンケート調査』によると、認知症を疑うきっかけとなる変化に気づいてから、最初に医療機関を受診するまでにかかった期間は、平均で 9.5ヶ月でした。

認知症の初期は症状が出る日と出ない日があるため、加齢によるもの忘れなのか認知症なのかを迷ってしまい、受診まで時間がかかってしまいます。

また親を無理して病院へ連れて行こうとするとケンカになり、かえって受診が遠のいてしまう可能性もあります。病院の受診は、ある程度時間がかかるものと心づもりをしておきましょう。

病院を受診するまでの9ヶ月間で子がやるべきこと

先ほど述べた最初に医療機関を受診するまでにかかった平均期間約9ヶ月の間に、子は何をすべきでしょうか?

まずは認知症に関する情報収集を、医療面と介護面から始めるといいと思います。医療面は、どの病院を受診するかを考え、病院の口コミを集めておきましょう。介護面では、親が暮らす地域を担当している地域包括支援センター(以下、包括)の場所を調べておきましょう。親の介護が必要になったとき、最初に相談する公的な無料相談窓口です。

親を病院へ連れて行けなかったとしても焦らず、認知症の本を読むなど情報収集する時間に充てましょう。また包括へ行って、今後の介護について話しあったり、認知症への不安について相談したりするのも良いと思います。年始のタイミングこそ、認知症のサインを確認し、違和感を感じた場合は情報収集など出来ることから始めてみてください。