半導体に欠かせない「超純水」とは

半導体の性能向上に伴って、「水」の重要性が増している。半導体受託最大手のTSMC[TSM](台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング)が熊本に工場を建設中だが、熊本県の水環境が優れていることが九州シリコンアイランドを支えている面も強い。特に半導体のウエハ洗浄工程などには水が大量に使われるが、微細化の進展とともに「交じりっけなしの水」である超純水のニーズが高まっている。

水は無色透明だが、実際には様々な成分が溶け込んでいる。水道水の場合、50メートルプールをいっぱいにすると、その中にはドラム缶2~3本分の不純物が溶けている。不純物を除去した純水・超純水ではさらにその力が強くなる。

水中の不純物を除去した「純水」では50メートルプールに角砂糖1個分の不純物があり、不純物が何も溶け込んでいない超純水では、50メートルプールにわずか耳かき一杯分の不純物しかないとのこと。水中に混在する不純物を除去した水を純水といい、さらに有機物や微粒子、気体など様々な工程で精製して純度を一段と高めたものが超純水となる。これは、水がモノを溶かす力が強いことを示しており、純水、超純水ではさらにその力が強くなる。

半導体の製造工程では、わずかなゴミも許されない半導体ウエハの洗浄をはじめ、FPD(薄型パネル)部品洗浄、医薬品の製造工程などに用いられる。ウエハ洗浄では溶かす力を活用することで、きれいに洗浄できる。

最先端デバイスの製造工程ではウエハの製造→洗浄(超純水)→成膜→洗浄(超純水)→レジストコーティング→露光・現像→エッチング(表面加工=超純水使用)→フォトレジスト(転写原版)のはく離・溶解(超純水使用)→検査組立という工程を繰り返す。そのため、半導体に超純水は必要不可欠となっている。

微細化が進む半導体業界。高度な超純水ニーズはより高まる傾向へ

半導体業界は半導体の性能を高めるために、微細化が進んでいる。オランダの露光装置メーカーであるASMLが半導体の線幅が10ナノ(ナノは10億分の1)メートルを切るEUV(極端紫外線)露光装置を開発して以降、この流れに拍車がかかっている。現在の先端は3ナノだが、2025年には2ナノが登場し、さらに1.4ナノが開発中とされている。

みずほ証券のリポートによると「微細化が進むことで、要求水質の超高純度化や、大量使用による超純水製造装置の大型化、超微量分析技術の確立が求められる。これは超純水製造装置メーカーの付加価値向上や1件当たり受注高の増加に寄与する」と指摘している。

また、パワー半導体向けの案件でも、高度な超純水ニーズが高まっているという。みずほ証券では電子産業向け超純水装置の市場規模が2027年度に向けて過去最高の水準になると想定している。

熊本県では現在半導体受託生産世界最大手のTSMCが工場を建設中で、2024年末にも稼働する予定だ。さらに第2工場の建設が予定され、一部報道では第3工場や第4工場の計画も伝えられている。ここでも重要となるのは、超純水の元になる「水」だ。

今後の半導体業界を牽引する注目の超純水関連株

ここからは、半導体業界を牽引する超純水関連銘柄をピックアップする。

野村マイクロ・サイエンス(6254)

超純水装置の専業大手。水処理増値の納入から、定期メンテナンス、水質アップ工事までを一貫して手掛けている。海外売上高比率は76%で、アジアが主力。韓国サムスングループと関係が深い。TSMC第2工場や北海道でのラピダス計画など、今後は国内の受注増に期待感が持てる。

【図表1】週足チャート
出所:マネックス証券ウェブサイト(2024年1月4日時点)

栗田工業(6370)

総合水処理の最大手。超純水供給事業が安定収益源となっている。超純水製造システムの建設・設置から運転管理、メンテナンスまでを一貫して提供。この対価として料金を得るソリューションビジネスを展開。顧客は栗田工業に依頼すれば、それだけで超純水の安定供給が受けられる仕組み。

【図表2】週足チャート
出所:マネックス証券ウェブサイト(2024年1月4日時点)

オルガノ(6368)

総合水処理エンジニアリング企業。半導体向け超純水製造装置に強みを持っている。国内の水処理装置では栗田工業と双璧を成す。超純水装置ではイオン交換樹脂を利用した精製方法(イオン交換式)を活用。イオン交換式ではイオンの反応を活用し、水中のイオン類を除去する。

【図表3】週足チャート
出所:マネックス証券ウェブサイト(2024年1月4日時点)

ジャパンマテリアル(6055)

半導体工場向け特殊ガス供給装置などが主体。工場に関連するガス、水などのトータルオペレーションを提供。超純水設備および工場からの排水処理設備の維持管理、オペレーション業務を手掛ける。顧客に代わって水処理設備に関わる様々な管理を請け負う。超純水は高度な装置によって作られている。請け負うことで顧客が求める生産性や品質向上に貢献している。

【図表4】週足チャート
出所:マネックス証券ウェブサイト(2024年1月4日時点)