2024年は世界的な選挙イヤーと言われます。米国の大統領選が話題ですが、その他主要新興国でも実施予定で、英誌エコノミストによると世界の半分以上の人口を抱える国々で選挙が実施される予定です。世界的に権威主義の増勢、民主主義の後退が見られる中で様々な外交・内政リスクを抱える各国選挙結果により世界の分断が進むのか、成長が志向されるのか、我々の生活面においても資産運用面においても影響が注目されます。

政治情勢が大きな話題となった年として思い返せば2016年には6月にBrexitというイギリスが欧州連合を離脱決定する国民投票があり、秋には米国選挙でトランプ大統領が誕生しました。どちらも事前予想を覆すイベントであり、一時的にリスク資産のボラティリティが高まりましたが、特に米国株式はその後上昇局面となりました。今回もそうなると期待して良いのでしょうか?

当時の教訓としては、まず政治の動きを予見するのは難しい、という事が言えてしまいます。大方の予想を裏切る結果が相場の急変動につながりましたが、その後リスク資産にとって大切なのは「誰だからどう」という憶測よりも景気動向でした。政治をめぐる憶測はノイズに過ぎず、政策が変更される中で景気を理解する必要がありました。

当時の米国経済はサイクル的にも反転上昇を試す局面で金融政策も利上げが開始された時期です。そしてトランプ政権下で堅調な経済が実現されたことがリスク資産への支えとなりました。なおブレグジットによる経済の負の影響が顕在化している英国株式は現在まで他国に大きく出遅れる展開にあります。政治変化の経済的影響を見極める必要があったイベントと言えるでしょう。

新興国では政策が急転換されることがあり、それが株式、為替に影響を及ぼすので投資先の動向には注意が必要ですが、それでも各国リスク資産を占う上で大切なのはまずは経済の動向と言えるでしょう。

現在の米国は成熟した経済が断続的な利上げによって減速を強いられるのか、それともソフトランディングを実現できるのか、見極めが大切な時間帯にあります。コロナ禍以降の現サイクルはモノ・サービスが異なるサイクルで補完し合う力強さを見せてきましたが、過去を振り返れば戦後12回の利上げ局面のうち10回はその後リセッションを強いられてきたことも留意されます。投資対象資産について経済はどうかを注意深く見ていく1年になると感じております。

金融引き締め効果の顕在化と共に政策転換も見込まれる中で2024年はどのような投資戦略が有効となるのか。『ポートフォリオのすすめ』では、中長期運用においては株式投資を軸に分散投資による資産急変動の抑制を推奨しておりますし、久しぶりの高金利時代は債券投資の好機とも見ておりますが、2024年はその他資産の動向含めて様々なトピックをお話しできればと思っております。本年もよろしくお願い申し上げます。