先週は端午節の連休で上海株式市場と深セン株式市場は木曜日と金曜日のみの2日間の取引でした。先週お伝えした6月9日(日)に発表された中国の経済統計が低調だったことを受けて、連休明けの6月13日(木)に上海総合指数と深セン総合指数は共に大幅に続落。上海総合指数は200日移動平均線を割り込み、深セン総合指数は50日移動平均線を割り込みました。ただし、6月14日(金)に深セン総合指数は急反発し、50日移動平均線を回復。一方、上海総合指数は反発したものの小幅高に留まり勢いがありません。これまで中断されていた中国のIPOが再開される見通しであることや、中国の銀行が自己基準を満たすために資金を手元に留めていることから資金流動性が無くなってきています。

過去、中国では指導部の交代がある年は新プロジェクトへの着手が始まり、固定資産投資が大きく伸びていました。たとえば、前回交代のあった2003年の固定資産投資の伸び率は27.7%で、その前年の16.9%から急加速しています。しかし習近平国家主席は中国経済の減速は構造改革に寄与する可能性があるとの見解を示し、張高麗副首相は成長率を過度に重視してはならず、リスクを警戒し、インフレを抑制し続ける必要があるとコメントしています。そして実際のところ、6月10日(月)に発表された人民元建ての新規融資は6674億元となり、4月の7929億元、3月の1兆0600億元から急減しており、当面政府からの景気刺激策は期待しにくい状況です。

一方、端午節の祝日が6月12日(水)だけであった香港株式市場も大幅続落。こちらも特に13日(木)の下落幅が大きなものとなっています。香港は中国と米国の両方の影響を受けますが、中国の経済指標が弱く地合の弱い状況が続いている上に、この日は中国株が連休明けで大幅下落。さらに、米国の量的金融緩和政策縮小懸念でアジア全体の株価が急落したことに追随した格好です。香港ハンセン指数は200日移動平均線を大きく下に突き抜けてしまいました。この下落がここ数年続いた季節的なものであれば夏場に底打ちして秋から上昇という予想も可能です。しかしこのところ続いている下落トレンドは香港だけでなく、インド、ブラジル、韓国、インドネシア、マレーシア、タイなど新興国株に共通して見られている現象です。米国株、欧州株はこれほどひどくないのと比べると、何かが起きていると言える現象です。すべては5月22日のバーナンキ議長の議会証言で、そう遠くないFOMCのいずれかで量的緩和を縮小するかもしれないと言及したことに端を発しています。この日を境に新興国から資金が抜け出ているとも取れる動きで、これが長期的現象となるようなら、要注意となります。

コラム執筆:戸松信博