みなさん、こんにちは。2022年も残り僅かとなってきました。2021年末のコラムでは、この1年を「再始動への産みの苦しみの1年」と位置付けていました。結果的にまさに、その通りの展開になったと感じています。実際、(これまでのところ)日経平均は大発会ザラ場の高値を結局抜けることなく、概ね26,000~28,500円の狭いボックス圏での推移に終始しました。

さて、2023年は卯年です。卯年の相場格言は「跳ねる」です。産みの苦しみの1年を経て、大飛躍となってほしいところです。そういった大きな変化が生じるのではとの期待を込めて、私は2023年を「波乱の1年」と位置付けたいと思います。

2022年、注目のテーマを振り返る

さて、今回は年末のコラムということもあり、2015年以来続けている「翌年(今回は2023年)の注目テーマ」を取り上げたいと思います。

2021年12月1日のコラムでは、コト消費、業界再編、スタグフレーション、そしておまけとして「インバウンドの回復」に注目しました。コト消費やインバウンド回復は2022年後半に株式市場で注目されるテーマとなり、スタグフレーションは当時に懸念していたほどの深刻さには至らなかったものの急速なインフレの進行という形で、やはり株価に一定の影響を与えました。

その一方、業界再編は確かに進捗があったものの執筆時に期待していたほど、インパクトのある盛り上がりには至らなかったと受け止めています。

それ以上に2022年は地政学リスクが差し迫った問題として浮上してきたように感じます。北京冬季五輪の直後から始まったロシアによるウクライナ侵攻は世界に衝撃を与えました。国連安保常任理事国自身が侵攻当事者になるという恐ろしい事実は世界を震撼させ、これを機に世界のエネルギーバランスやサプライチェーンは大きな変動が予想される状況となりました。ウィズコロナがようやく浸透する中、世界には新たな危機が浮上してきたのかもしれません。

2023年はスポーツ、環境関連のイベントの他、新日銀総裁人事に注目

それでは2023年はどうでしょうか。主なイベントとしては、3月にワールドベースボールクラシック(WBC)、4月に新日銀総裁の就任及び全国電力料金の値上げ、6月に2030年冬季五輪大会開催地決定(札幌が立候補中)、9月にラグビーワールドカップ、11月に国連気候変動枠組条約会議(COP28)などが予定されています。

この中で、私が最も注目するのは新日銀総裁人事です。10年目を迎える黒田総裁は任期切れとなるため、2023年の2月頃からは総裁再任の可能性を含めて、後継人事が取り沙汰されることになります。後継総裁による金融政策の舵取りは間違いなく、株式市場に相当な影響を与えることになるでしょう。

黒田総裁の金融緩和路線を継続するのか、どこかで金融引き締めに踏み切るのか、おそらくは株式市場や為替市場においても、金融政策を巡って思惑的な動きが加速してくるものと予想します。

実際のところ、現在我々が直面しているコストプッシュ型のインフレは金融緩和政策に伴う円安の影響が小さくありません。だからかと言って、円安抑制のために安易に金利を引き上げると需要の腰折れを誘発しかねず、それはスタグフレーションの発生リスクにも繋がります。後継総裁が誰となり、どういった舵取りをするのか、世界的にも非常に注目されることになると予想します。

気候変動問題への関心はより高まるか

また、COP28の行方にも注目しています。気候変動問題への関心の高まりはSDGsへの取組みを企業に強く求めていました。COP28で、その流れがさらに加速するのか、あるいは流れに変化が生じるのかが、その焦点になるのではと考えます。

気候変動対応が重要課題となってきていることは、既にコンセンサスになりつつあると受け止めるものの、対応策は世界各国の足並みが揃っているとは言い難い状況です。

特にロシアによるウクライナ侵攻を契機に世界各地ではそういった長期的な問題よりも、少々それに逆行するとしても短期的な問題を解決すべきという論調も、また出てきているのです。COP28ではそういった姿勢に対し、世界的にどう対処していくのかが議論されることでしょう。

株式投資を考える上でもSDGsという「銘柄選別フィルター」が、より一層厳密なものとなっていくのか、フィルターへの考え方がより柔軟になっていくのかの大きな転換点になっていくのかもしれません。

衆議院解散総選挙が行われるのなら、「選挙は買い」

なお、現時点では極めて確率は低いのですが、衆議院の解散総選挙が行われる可能性も否定できないと考えます。

国内では4月より電気料金が大幅に上昇する可能性が高く、それに併せて、様々な製品・サービスの値上げはまだまだ続きそうな勢いです。経営や生活のコストアップが続く中、新日銀総裁による金融政策の舵取り如何では景気の先行きにも暗雲が漂ってきかねない状況です。地政学リスクも着実に増す中、既に支持率が低下傾向にある現政権が政権浮揚を目指して、選挙に打って出るというシナリオは十分あり得ると考えます。

当然、このコラムで何度も触れている通り、相場格言的には「選挙は買い」です。卯年の「跳ねる」相場は、こういった流れがきっかけになるのではないかと私は想像しています。