各所から来年の市場予想が出始める時期になりました。弊社アナリスト陣による2024年相場展望もご参照頂けますと幸甚です。

ところで今年2023年の予想はどうだったのか、コンセンサス予想と言われる市場予想平均値で見てみましょう。日本株で振り返ってみると2023年年初の日経ヴェリタスによれば、日経平均の高値予想平均値は31,377円と2022年末26,094円から上昇が予想されており、その軌道は前半安・後半高がコンセンサスでした。現在33,000円超ですので、方向性は同じながらも予想数値としての精度は高いとはいえず、また3月末に東京証券取引所が資本効率向上を要請してからの4-6月の上昇がハイライトとなった点では前半安・後半高という展開でも無かったでしょう。市場の動きは大方の予想通りにはいかない、とはよく言われることです。

コンセンサス予想値を時系列で確認すると、1年後の株価予想は概ねその時点の株価+10%程度で推移してきました。これは過去の配当込み年間リターンが平均10%(1949年以降のTOPIXデータより算出)であることに起因すると思われますが、注目されるのは実績値の振れ幅です。過去の年間リターンの標準偏差は24%であり、これは約68%の割合でリターンが10%±24%となることを意味します。-14%から+34%で振れるわけですから、コンセンサス予想が当たりにくいのも無理はないでしょう。

このように単年度の予想を当てることは難しいですが、株のリターンが平均どの程度かという目線は中長期の投資戦略を組み立てる上で参考数値としてとても大切です。見方を変えて過去データから1年保有のリターンでは無く、5年保有での年平均リターンを計算すると約9%となりますが、標準偏差は11%に低下します。なお10年保有での年平均リターンは8%、標準偏差は7.5%です。

このように中長期保有を前提とすればリターンの振れ幅は次第に落ち着き期待値に近づいていきます。単年度の振れはつきものであると認識しながら、中長期でリターンを獲得していくという心構えが重要です。同時にいつも同じ経済成長の軌道ということは有りませんので、過去と何が異なるか経済・政治情勢等確認していく必要があります。

日本は目先のテーマとしてデフレの終了や資本効率向上が意識されるなど、諸外国比でキャッチアップの余地が大きいでしょう。一方で長期的な視点では人口動態という向かい風が経済成長を妨げる要素となります。その点では資本蓄積や生産性の向上、また移民政策の行方など民間努力のみならず政策サポートも必要な中で政治の行方も注目されます。