先週の上海総合指数は週末にかけて失速しました。週前半は都市化に関する景気刺激策への期待感が高まりました。李克強首相は中国経済の新たな成長エンジンとしての都市化の重要性を再三指摘しています。そして、国家発展改革委員会も年内に都市化政策に関わる計画を発表する方針です。先週は、数週間以内に中国政府の高官が北京で都市化に関する会合を行い、これが都市化に関する景気刺激策発表につながるのではないかとの思惑が高まり、週初の株価上昇を促しました。特に大型株よりも地図ナビゲーション関連などの都市化関連の小型株が大きく上昇し、構成銘柄に中小型株の多い深セン総合指数は大きく上昇し、年初来高値を更新しています。

しかし、23日(木)にHSBC中国製造業PMIの5月速報値が4月の50.4から低下して49.6となり、景況感の境目である50を割り込んで7ヶ月振りの低水準に落ち込んだと発表され、銀行株を中心に大型株の株価は一転して軟調に。銀行株については不良債権への懸念が根強く残っている上、21日にはゴールドマンサックスが保有していた中国最大手の銀行である工商銀行(01398)の株式全てを売却したことが伝えられ、外国の機関投資家が中国の銀行に対して悲観的な展望を持っているとの懸念が拡がりました。ただ、中小型株は比較的堅調な足取りで、深セン総合指数は週を通しても大幅上昇となっています。

一方で、ハンセン指数は大幅続落。特に前述のHSBC中国製造業PMIの悪化と日本株急落の影響を受け、23日(木)に大きく下がり、ほぼ2ヶ月振りの大幅下落となりました。もっともこの大幅下落は日本株急落の影響も大きいと思われ、翌24日(金)は50日移動平均線まで下落後に反発に転じ、ローソク足チャートでは下ヒゲをつける形となっています。香港では再び中国経済の成長鈍化が強く懸念されるようになってきていますが、当の中国の株価は、中小型株が多い深セン総合指数はむしろ上昇して、年初来高値を更新しており、上海総合指数も週を通して見れば小幅な下落で済んでいます。また、ハンセン指数については、長期トレンドの指標の1つと考えられる、200日移動平均線が上向きのままで、指数自体も200日移動平均線よりも高い水準で推移しており、長期上昇トレンドは崩れていません。しばらくは50日移動平均線近辺での株価推移になると予想されるところですが、仮に200日移動平均線近辺まで調整するところがあれば、投資を検討しても良いチャンスになると予想されます。

コラム執筆:戸松信博