◆昨日の続きである。昨日の小欄は選挙速報を流すテレビ局の「ゼロ打ち」「当打ち」の話を取り上げた。事実を一刻も早く速く伝えるという報道の使命を懸けたテレビ局各社の熱意は分かる。しかし、なぜそこまで速報性にこだわるのかと言えば、半分はライバル社との意地の張り合い、メンツのため、との指摘も否めないだろう。

◆英オックスフォード大学でAI(人工知能)の研究を行うマイケル・A・オズボーン准教授は、米国労働省のデータに基づいて、702の職種が今後どれだけコンピューター技術によって自動化されるかを分析した。それによれば、今後10~20年で米雇用の約半数がコンピューターに取って代わられる可能性があるという。僕は、テレビ局の「当打ち」に関わる仕事も、そのひとつだろうと思う。将来、電子投票が一般化すれば、もっと速く正確な結果がコンピューターによって集計されるから、現在テレビ局がマンパワーで行っている選挙速報関連の作業はすべて不要となるだろう。

◆ネット選挙、あるいは電子投票について、制度や法律などいちから書くと膨大な量になるので詳しくは触れないが、ネット選挙が全面的に解禁されていないことは事実である。そんななか、衆院選投開票の2日前、山形大学のキャンパスで模擬電子投票が行われた。学生たちの声を拾ってみる。小選挙区の候補者や比例区の政党一覧を見て、「誰も分からないんだけど」。そもそも「比例区って何」。「自分の選挙区も覚えてなかった」。「勉強になりました」。秋田県に住民票がある20歳の女子学生は「帰らなくてもネットで投票できたら便利だと思います」。

◆誰もが容易に想像できる。ネットで投票できたら選挙に係る「コスト(=カネ)」は下がり、「投票率」は上がると。だからこそ、既得権益政権は、ネット選挙を認めるわけがない。カネがかからず誰もが参加できる政治。それを望まないのは民主主義と言えるのか。将来も「当確打ち」の仕事が残り続けるか、あるいは消えてなくなるか。それは日本の民主主義の成熟にかかっているだろう。衆院選の最終投票率は52%。戦後最低を更新した。

マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆