モトリーフール米国本社、2023年10月31日 投稿記事より

主なポイント

・アマゾン・ドットコムは2023年に、AIや技術インフラへの投資を増やしている
・AWSは3つの分野で製品やサービスを開発することで、クライアントのあらゆるAIニーズに対応することを目指している

アマゾン・ドットコム[AMZN]のアマゾン ウェブ サービス(AWS)はすでに、クラウドコンピューティング・サービスの世界的リーダーである

アマゾン・ドットコム[AMZN]は、eコマースとクラウドコンピューティングという2つの急成長市場のトッププレーヤーであり、これらの市場は年間数十億ドルという利益を同社にもたらしています。投資家もこれに魅了され、同社の時価総額は1兆ドルを上回るまで押し上げられています。eコマースとクラウドの両分野での優位性を考えると、これらの分野がアマゾン・ドットコムをめぐるストーリーで今後も中心的存在になると思われます。

そして今、アマゾン・ドットコムは両事業の業績向上に寄与するかもしれない、あるツールを活用しています。人工知能(AI)です。同社は業務の簡略化とコスト効率の向上を図るために、事業全体にAIを導入しており、顧客にもAIの利点を提供しています。この画期的なテクノロジーは、アマゾン・ドットコムにとって次の成長ドライバーとなり得るでしょうか。アンディ・ジャシーCEO(最高経営責任者)の発言の中に、この質問の答えが隠されているかもしれません。

アマゾン・ドットコムとAI

まず、アマゾン・ドットコムとAIの関係について説明しましょう。同社にとってAIは決して目新しいものではなく、アマゾンのユーザーであれば、同社のプラットフォームで買い物をする際にすでにその恩恵を受けているかもしれません。例えば、アマゾンはAIを通じて、ユーザーの好みに合わせた買い物のアイデアを提供してくれます。また、バーチャルアシスタントのAlexaにもAIが活用されています。さらに、在庫管理や配送の効率化にも、AIは役立っています。

ここで、先日行われた2023年第3四半期の決算発表の際にジャシーCEOが語った言葉を振り返ってみましょう。ジャシーCEOは、トレーニングすることで新しいコンテンツを作成し続けることができる生成AIについて言及し、生成AIがAWSに「数百億ドル規模の売上高」をもたらす可能性があると述べました。

AWSはアマゾン・ドットコムのクラウドコンピューティング部門であり、同部門は近年、全社の営業利益の約60%を占める大きな稼ぎ頭となっています。AWSは売上高も大きく、2022年には総売上高5,140億ドルのうち800億ドル超をAWSが占めました。

ジャシーCEOのAI計画

ジャシーCEOによれば、クライアントのあらゆるAIニーズに対応することを目指し、AWSは3つのレベルでAIに投資しています。第1に、同社は大規模言語モデルの学習能力と推論能力を支えるTrainiumチップとInferentiaチップの開発に取り組んでいます。

第2に、AWSは他の企業に対し、インフラを自社管理することなく、既存の大規模言語モデルを使用し、自社の目的に応じてカスタマイズする機会を提供しています。これは、Amazon Bedrockサービスを通じて行われます。

第3に、AWSは新サービスCodeWhispererを通じて、大規模言語モデルを実行するアプリケーションの開発にも関わっています。CodeWhispererはAIによるコーディング支援サービスで、企業の既存コードに基づいてコーディングを提案してくれるものです。つまり、これを使うことは、まるで自社のコードベースを熟知している先輩エンジニアからアドバイスをもらっているようなものです。

アマゾン・ドットコムの2023年通年の資本投資額は約500億ドルとなる見通しで、2022年の590億ドルを下回りますが、その中でもAIやAWSインフラ全般への投資額は増加しています。

アマゾン・ドットコムのAI投資は、いつになったら実を結ぶのか

では、もっともな疑問として、こうした投資はいつになったらアマゾン・ドットコムや投資家に利益をもたらしてくれるのでしょうか。ここでも、ジャシーCEOのコメントにヒントが隠されています。ジャシーCEOによれば、数百億ドルの売上高は「今後数年間」で実現する見通しである、ということです。

同社はまた、クラウド分野におけるリーダーシップが、AI分野での優位性に貢献するとも述べています。なぜなら、企業は自社のデータにモデルを導入しようとし、そうしたデータはAWSに保存されているため、すぐに利用できるAIサービスを使うのが手っ取り早いからです。

また、AWSの利益率はeコマース部門の利益率よりもはるかに高いため、クラウド事業の中でAIサービスを開発することは、莫大な利益につながるとみられます。第3四半期のAWSの営業利益率が30%を上回る一方で、北米eコマース部門の営業利益率はわずか4.9%でした。

つまり、ジャシーCEOのコメントから推測すると、AIはアマゾン・ドットコムにとって次の成長ドライバーになる可能性が高いと思われます。当然ながら、AIはまだ黎明期であるため、一夜にして結果が出ることはないでしょう。しかし将来的に得るものは多いと思われます。アマゾン・ドットコムの投資と、これまでの進捗状況は、同社がいずれAIの勝者になる可能性があることを示唆しており、時価総額1兆ドル企業の投資家にとっては朗報になることでしょう。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。アマゾン・ドットコムの子会社であるホールフーズ・マーケット元CEOのJohn Mackeyは、モトリーフール米国本社の取締役会メンバーです。元記事の筆者Adria Ciminoは、アマゾン・ドットコムの株式を保有しています。モトリーフール米国本社は、アマゾン・ドットコムの株式を保有し、推奨しています。モトリーフールは情報開示方針を定めています。