米アマゾン・ドット・コム[AMZN]が10月26日に発表した2023年7-9月期の決算は、純利益が前年同期に比べ3.4倍の98億7900万ドル(約1兆4900億円)となり、21年10-12月期以来の高水準だった。

営業利益4.4倍の100億ドル超え

売上高は同13%増の1430億8300万ドル(約21兆5100億円)で、2四半期連続で2桁成長を達成した。主力のEC(電子商取引)事業が好調だったことに加え、営業費用の伸びを抑えたことが、好業績につながった。

 
同四半期の営業利益は同4.4倍の111億8800万ドル(約1兆6800億円)だった。その一方で、販売・マーケティング費用や一般管理費を削減したことで、営業費用の伸び率を6%弱にとどめた。

1株利益は94セント(前年同期は28セント)。売上高、利益ともに市場予想を上回った。アマゾンの株価は10月26日の米株式市場の時間外取引で5%超上昇した。

アンディ・ジャシーCEO(最高経営責任者)は決算説明会で、「当社の小売り事業におけるサービスコストと配送速度がさらに一歩前進し、クラウドサービスの成長が引き続き安定した。広告収入が堅調に伸び、好調な7-9月期だった」と述べた。

直営ネット通販7%増、出品者事業20%増

事業別売上高は、直営のネット通販事業は前年同期比7%増の572億6700万ドル(約8兆6100億円)で、前四半期の伸び率4%を上回った。外部出品者からの手数料収入や出品者向け物流サービス収入は同20%増の343億4200万ドル(約5兆1600億円)だった。

 
有料プログラム「Prime(プライム)」の会費などサブスクリプション(定額課金)収入は、同14%増の101億7000万ドル(約1兆5300億円)。自社ECサイトやECアプリ内で展開するネット広告事業の売上高は、過去最高の120億6000万ドル(約1兆8100億円)となり、前年同期から26%増加した。四半期広告収入の100億ドル超えは2四半期連続となる。

傘下の「Whole Foods Market(ホールフーズ・マーケット)」や直営の「Amazon Fresh(アマゾン・フレッシュ)」などの実店舗事業の売上高は同6%増の49億5900万ドル(約7500億円)だった。

クラウドの伸び12%、ジャシーCEO「引き続き安定している」

一方、クラウド事業「Amazon Web Services(AWS)」の売上高は同12%増の230億5900万ドル(約3兆4700億円)だった。このAWS事業の増収率は、過去最低を記録した前四半期と同じだ。ただ、ロイター通信によると、AWS事業の売上高はアナリスト予想を上回った。

ジャシーCEOは説明会で、「AWSは、既存顧客との取引拡大や新規顧客の獲得など、契約成立のペースを加速させている。AWSの伸びは引き続き安定している」と述べた。

2023年10-12月期の売上高は、前年同期比7〜12%増の1600億〜1670億ドル(約24兆500億〜25兆1100億円)を見込む。営業利益は70億〜110億ドル(前年同期は27億ドル)とする見通しを示した。

ブライアン・オルサブスキーCFO(最高財務責任者)は、「割引商品に対する消費者の支出が以前よりも増えている。AWSでは、法人顧客による支出の最適化が続いているが、アマゾンの最新クラウドには好意的な反応がある」と述べた。

アマゾンは2023年9月25日、生成AI(人工知能)開発の米新興企業、アンソロピック(Anthropic)と戦略提携し、最大40億ドル(約6000億円)を出資すると明らかにした。取引の一環として、アンソロピックはアマゾンが自社開発するAI用半導体を活用し、AIソフトウエアを構築・展開する。アマゾンはアンソロピックの技術をAWSで提供し、顧客企業が生成AIを自社サービスに組み込めるようにする。

1ドル=150.33で換算