1998年にかけて展開した「絶望の円安」

「円安の流れは止められないのではないか」という円に対する悲観論が最も強まったのは、1990年以降であれば1998年にかけての147円まで米ドル高・円安が展開した局面だったのではないか。これが少なくとも1990年以降では一番の「円悲観相場」だったと考えられる(図表1参照)。

【図表1】米ドル/円の推移(1990年~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

 この円安は日本株の下落と基本的に連動して展開したものだった(図表2参照)。株安と円安の連動は、客観的には日本からの資本逃避、キャピタル・フライトを感じさせる。そして、当時の日本経済の状況は、それに対して違和感のないものだった。株安と円安の連動は、1997年後半から目立つようになったが、それは大手証券などの破綻が続き、デフレへ転落するタイミングと基本的に重なるものだった。

【図表2】米ドル/円と日経平均(1997~1998年)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

2022年、2023年にかけての円安との大きな違いは株価

この株価と円相場の関係は、最近の場合は1998年にかけての状況とはほとんど正反対と言っても良さそうだ。2023年にかけて米ドル高・円安が2年連続で150円前後に向かう中で、日本の株価はむしろ一段高となった(図表3参照)。円安は止まらないものの、一方で株高が展開する中では、1998年にかけての円安局面のような日本からの資本逃避が懸念される局面ではないだろう。

【図表3】米ドル/円と日経平均(2023年1月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

 

以上のように見ると、「止まらない円安」への絶望感は、今回とは比べられないほど1998年にかけて展開した円安局面で強かったと考えられる。実際に、当時は1997年11月、125円程度から円安を止める為替介入を行っていたが、それでも円安は止まらずに140円を大きく超えていった。1998年6月には、日米協調の米ドル売り・円買い介入も実現したが、それでも円安は止まらなかった。まさに、名実ともに「止まらない円安」だったのだろう。

そんな「止まらない円安」も、結果的には1998年8月147円で終了した。では「止まらない円安」がどのように終了したのか。それについて、次回でさらに追及してみたい。(続く)