◆第64回「もうひとつの甲子園」で取り上げた若手俳人の神野紗希さんが出した入門書が、昨日の日経新聞夕刊の文化欄で紹介されていた。ユニークなのはクイズ感覚で俳句を学べるドリル形式になっているところ。例えば、こんな具合である。

「初恋のあとの永生き(A)」(池田澄子)。空欄Aに、あなたなら何を入れますか?次の例から選んでみましょう。(1)春満月(2)青葉風(3)秋桜(4)枯木立

正解はどれか?答えのページを見ると、「絶対の正解はない」。なんとも粋な答えではないか。この発想は僕の相場や株価の見方に似ている。

◆もうひとつ思ったことがある。「初恋のあとの永生き」というのは、これから誰にとっても経験する普通のことになるだろう。小欄でも度々取り上げているが、今や4人に1人が65歳以上の高齢者である。国立社会保障・人口問題研究所の予測によると、65歳以上の高齢者の割合は10年後に30%を突破し、およそ20年後には33%、つまり3人に1人が高齢者となるという。

◆長生きはもちろん、めでたいことだ。しかし、喜んでばかりもいられない。フィデリティ退職・投資研究所所長の野尻哲史さんは「老後難民」という言葉で警鐘を鳴らしている。どんどん新しい高齢者向けサービスが生まれるにもかかわらず、十分な資金が無いためにそれを享受できない人が増える懸念がある。医療が受けられない、身近に生鮮食料品が手に入るお店がない、安心して暮らせる終の棲家がない・・・・・こうした状況を総称して老後難民と呼ぶ。

◆老後難民にならないためには早いうちから老後への備えが必要だ。収入を増やすか支出を減らす、もしくはその両方だ。収入を増やすのはそう簡単ではない。よって投資運用が大事になる。若いうちから老後に備えた資産形成のプランニングをしっかりたてておくことが肝要である。

◆だがしかし、なにごとも先立つものはカネ...というばかりでは生活がギスギスしてしまう。そこで「初恋」の出番だ。若き日の恋を思い出すことは心を豊かにしてくれる。それは春の満月をみる幸せな思いに似ている。青葉を揺らす爽やかな初夏の風の匂いがする。秋の野に咲くコスモスの可憐さを感じ、冬の陽ざしを浴びて凛として立つ木々の潔い美しさが心眼に浮かぶ。老いてなお恋心を忘れない生き方は理想である。

◆若い諸君にアドバイス。貯金や投資もいいが、デートにもおカネを使おう。若いうちに素敵な恋をしておこう。それはおカネにも勝るとも劣らない素晴らしい「財産」になる。

◆さて、神野さんの問題に対する僕の答えは、「そのまま」である。「初恋のあとの永生き(A)」の、(A)をそのままカッコ・エーと詠む。 初恋の あとの永生き カッコええ(格好いい)

マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆