米ドル/円「為替介入相場」の特徴とは?

財務省が資料で公表したところによると、2022年9~10月にかけて、日本の通貨当局が円安阻止の米ドル売り・円買い介入に出動したのは9月22日、10月21、24日の3回だった。最初の9月22日については、直後に財務省が為替介入を行ったことを正式確認したものの、その後は「ノーコメント」の方針に。そのため、未確認の中で介入を行った「覆面介入」の可能性が有力視されたケースが、10月13、18日など何度かあった(図表参照)。

【図表】米ドル/円の日足チャート(2022年8~11月)
出所:マネックストレーダーFX

実際に介入が行われた日と、噂になったものの実は介入がなかった日では、米ドル/円の値動きに分かりやすい幾つかの特徴があった。その1つが米ドル/円の当日の下落幅だ。

実際に介入が行われた日の米ドル/円の最大下落幅は、9月22日が5.5円、10月21日が5.7円、そして10月24日が4.2円だった。要するに、介入が行われた日の米ドル/円は一時的とはいえ全て5円前後の急落が起こっていた。

これに対して、「覆面介入」が有力視されながら、実際に介入がなかった日の米ドル/円の最大下落幅は、10月13日が1.1円、同18日が1円といった具合で、最大でも1円程度の米ドル/円反落にとどまっていた。

2022年の米ドル売り・円買い介入は、9月22日が2兆8千億円、10月21日が5兆6千億円もの大規模に達した。さすがにこれほどの巨額の米ドル売りが行われると、米ドルの下落が1円程度にとどまるということはなかったようだ。

なお、2022年の3回の米ドル売り介入で当日の米ドル下落幅が4.2円と唯一5円未満にとどまったのは10月24日だったが、この日の米ドル売り介入額も7千億円に達した。他の2回に比べると少額ではあるものの、7千億円の米ドル売りは普通の感覚からすると巨額だ。

日本の通貨当局による為替介入は、2010年以降はそれ以前と大きく異なり、介入額を大規模化する一方で、効果的なタイミングを絞り込み集中的に行うスタイルに変わった。この結果、実際に米ドル売り・円買い介入が行われた際には、一時的とはいえ米ドル下落幅が5円前後にも拡大するインパクトになったということではないか。

一方で、このような為替介入でも大きな米ドル高・円安の流れは変えられないと考え、介入を受けて急落したところは、絶好の米ドル「押し目買い」局面と見なす市場参加者は多かったようだ。このため、介入が行われた3日とも、米ドル急落は一時的にとどまり、引けにかけて大きく反発、いわゆる長い「下ヒゲ」を残すチャートになった。介入が行われた3日間の米ドル/円の「下ヒゲ」は1.5~3円にも達した。

巨額の米ドル売り介入により一気に5円前後の米ドル急落が起こるものの、米ドル下落が落ち着くと「押し目」待ちの米ドル買いが殺到することで、米ドルが急反発に転じるのも、介入相場の特徴的な値動きの1つだったと言えそうだ。