モトリーフール米国本社、 2023年7月2日投稿記事より

主なポイント

・エヌビディアは2023年の株式市場でトップクラスのパフォーマンスを上げている
・AI関連企業のオペラは注目されていないが、株価パフォーマンスはエヌビディアをも上回る
・それにも関わらず、バリュエーションはエヌビディアよりもはるかに割安

オペラの成長性、収益性、株主重視のアプローチは注目に値する

人工知能（AI）は2023年に最も注目されている業界であり、AIを支える強力なデータセンター向けチップを提供する半導体大手エヌビディア［NVDA］はそうしたトレンドを主導しています。その結果、エヌビディアの株価は年初来で187％上昇し、同社は時価総額1兆ドルクラブの仲間入りを果たしました。

そのエヌビディアのパフォーマンスさえも上回る小型AI銘柄があります。ノルウェーを本拠とするオペラ［OPRA］の株価は年初来で203％上昇しており、過去最高値を更新しています。同社は強力なAIツールを組み込んだ人気のウェブブラウザを開発し、急速に成長しているだけでなく、株主に還元できるだけの高い利益を上げています。

2023年の力強い株価上昇にも関わらず、時価総額はわずか16億ドルであり、バリュエーションは魅力的です。言い換えれば、今からでも買うのに遅くないということです。その理由を説明しましょう。

未来のウェブ閲覧体験を創造

オペラが開発したウェブブラウザ「Opera」は、マイクロソフトのEdgeやアルファベットのGoogle Chromeといった競合製品よりも多くの機能を搭載し、操作性も優れています。

Operaには、広告ブロッカー、VPN、メッセージサービス、暗号資産ウォレットなど、他の一般的なプラットフォームであれば、プラグインをインストールしなければならない機能が組み込まれています。中でも最も重要なのは、OperaにはAIブラウジングがデフォルトで搭載されていることです。

オペラが開発した独自の生成AIである「Aria」は、質問に答えたり、プログラミングコードを書いたり、ソーシャルメディアへの投稿を作成したりすることができます。同社はまた、オープンAIとも提携しており、ChatGPTの機能もデフォルトで搭載されています。つまりユーザーは、強力な2つのAI機能両方の強みを享受できるのです。

オペラはさらに、Opera GXと呼ばれる、ゲーマー向けに特化した特別バージョンのブラウザも開発しています。Opera GXにはCPUやメモリの制限機能が付いているため、ユーザーはより多くの処理能力をゲームに使うことができ、またDiscordやTwitchといった人気のチャットやストリーミングのプラットフォームもサイドバーに表示されます。

2023年第1四半期のOpera GXの月間アクティブユーザー数は2170万人、Operaブラウザ全体では3億1900万人でした。オペラがマーケティング戦略を単なる成長から収益性重視にシフトしている影響で、全体のユーザー数は減少傾向にあります。

オペラの売上高の大半は検索と広告によるもので、同社は収益性の低い地域ではユーザー数を減らそうとしています。とはいえ、こうしたユーザーは獲得するのも簡単です。

着実な成長と収益性

オペラの2017年の売上高は1億2800万ドルでしたが、2023年には3倍以上に増加する見通しです。経営陣は2023年の売上高が3億9000万ドルに達するとの見通しを示しています。利益に関しては、2017年以降、投資案件の1つで減損損失が発生した2021年を除いて、毎年黒字を計上しています。

実際、ここ数年のオペラは、効率性を特に重視しています。先に述べたように、同社は収益性の高い地域に焦点を移しており、ユーザー1人当たり平均売上高（ARPU）は2019年以降で174％も増加しています。

こうした収益性のおかげで、オペラは自社株買いと配当を通じて利益を株主に還元しています。最近の投資家向け説明会によれば、同社は2020年以降に1億9800万ドルを自社株買いに充てており、これは発行済み株式の28％に相当します。理論上、他の条件がすべて一定であれば、自社株買いは株価上昇につながるはずです。

同社はまた、2023年2月に7100万ドル相当の同社初となる特別配当も実施しました。特別配当は通常1回限りであるため、今後も行われると期待することはできませんが、同社は現在の自社株買いプログラムがまだ3000万ドル残っています。

オペラ株のバリュエーションは魅力的

AI関連銘柄に限って言うと、オペラのバリュエーションはこの新興業界の同業他社と比べて驚くほど割安に見えます。過去12ヶ月の売上高3億4600万ドル、時価総額16億ドルに基づくと、株価売上高倍率（PSR）はわずか4.6倍です。

AIソフトウェア企業のシースリー・エーアイ［AI］のPSRは13.1倍、エヌビディアのPSRは驚異の39.3倍です。

もちろん、エヌビディアはAI業界の中心に位置しているため、非常に特殊な方法でAIを活用しているオペラのような企業と比べてプレミアムな株価で取引されるのは当然でしょう。しかし、インターネット検索業界の変化に伴って、オペラには大きな成長機会があります。

チャットボットによる検索では、マイクロソフトのBingがリードし、グーグルのBardは後れを取っています。Operaがグーグルより進んでいるのは、Bingと同様に話題のChatGPTツールを使用しているからであり、これは特筆すべき成果と言えます。

ゲームに関しては、オペラはOpera GXの最大市場規模をユーザー5億人と考えています。つまり、現在の普及率は5％にも満たず、大きな成長余地が残っています。

AIに関して、オペラが次のエヌビディアになることはないでしょうが、オペラは2023年にエヌビディアよりも速いスピードで成長しており、控えめなバリュエーションは上昇余地が多分にあることを示唆しています。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。アルファベットの幹部であるSuzanne Freyは、モトリーフール米国本社の取締役会メンバーです。元記事の筆者Anthony Di Pizioは、記載されているどの企業の株式も保有していません。モトリーフール米国本社はアルファベット、マイクロソフト、エヌビディアの株式を保有し、推奨しています。モトリーフールは情報開示方針を定めています。