利上げ見通し上方修正でポンド買い急増

英ポンド/円の上昇は、過去1ヶ月余りで急加速している(図表1参照)。その理由は、根強いインフレ懸念から、利上げが強化されたためとの理解が一般的だろう。英国の中央銀行であるBOE(イングランド銀行)は先週、2023年に入ってから初めて利上げ幅を0.5%に拡大した。さらに金利市場では、2024年にかけて、政策金利は6%以上に引き上げられるという見通しになっている。

【図表1】英ポンド/円の推移(2021年1月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

ただ少し気になるのは、そういった金融政策の見通しを織り込んでいると考えられる日英2年債利回り差との関係で見ても、英ポンド高は過剰反応の懸念があるということ(図表2参照)。ましてや、利上げ強化により先行きの景気見通しは慎重になっていると考えられ、日英10年債利回り差ポンド優位の拡大は鈍いことから、両者のかい離はさらに目立っている(図表3参照)。

【図表2】英ポンド/円と日英2年債利回り差(2023年1月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成
【図表3】英ポンド/円と日英10年債利回り差(2023年1月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

金利差拡大にかい離した英ポンドの急騰を説明できそうなのは、投機筋のポジション動向だ。CFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の英ポンド・ポジションは、先週にかけて買い越しが急拡大となった(図表4参照)。

【図表4】CFTC統計の投機筋の英ポンド・ポジション(2010年~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

以上のデータを素直に解釈すると、根強いインフレ懸念を受けたBOEの利上げ強化に、金利以上に英ポンド買いが敏感に反応したということかもしれない。ではBOE利上げ強化に伴う英ポンド買いは、まだまだ続くだろうか。

上述の図表4を見る限り、英ポンド買い越しはあっという間に2010年以降の最高水準に達した。これを見る限りは、英ポンドは一気に「買われ過ぎ」が懸念される状況に変わった可能性がありそうだ。

90日MA(移動平均線)かい離率は、短期的な「行き過ぎ」を確認するものだが、先週にかけて英ポンド/円は「上がり過ぎ」懸念が強くなってきたようだ(図表5参照)。そして5年MAかい離率は中長期的な「行き過ぎ」を確認するものだが、これで見ても英ポンド/円は「上がり過ぎ」警戒域に入っている可能性が高い(図表6参照)。

【図表5】英ポンド/円の90日MAかい離率(2010年~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成
【図表6】英ポンド/円の5年MAかい離率(1995年~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

以上見てきたように、英ポンド/円は短期的にも中長期的にも「上がり過ぎ」懸念が強くなっている可能性がある。上昇方向へ短期的に「行き過ぎ」になるのは、別な見方をすると、それだけ上昇の勢いがあるということかもしれないが、そうは言っても行き過ぎにも自ずと限度はあるだろう。英ポンド/円の上昇は目先的にはクライマックスに向かっている可能性が高いということではないか。