モトリーフール米国本社、2023年6月20日 投稿記事より
主なポイント
・強気相場には、チャンスもあれば障害もある
・バフェット氏は投資先を見極める際に、株価の動きではなく、優れた事業に着目している
・また、過小評価されている銘柄にも注目している
強気相場には誇張がつきものであり、市場の熱狂に惑わされてはいけない
強気相場は既に始まっているのでしょうか。その答えは、尋ねる相手によって変わります。足元の株価上昇が強気相場入りの定義に当てはまるかどうかはさておき、力強い勢いを示していることは間違いありません。S&P500指数は年初来で15%近く上昇し、2022年の下落分を取り戻そうとしています。
著名な投資家であるウォーレン・バフェット氏の有名な投資アドバイスの1つに、「他人が貪欲になっているときに恐れ、他人が恐れているときに貪欲になれ」というものがあります。これは1986年の株主宛ての年次書簡に書かれていた言葉ですが、市場が急上昇している時は、大局的に物事を見ることが有効です。
現在の状況について少なくとも確かなことは、一握りの銘柄が急騰し、市場全体を押し上げているということです。投資家は、株価が上昇するのを見て確信を強めていますが、これこそまさに、バフェット氏が警告するシナリオです。
たとえ今でないとしても、強気相場はいずれ必ずやってきます。その時こそ、投資家はブレーキを軽く踏み、慎重に行動する必要があります。バフェット氏の賢明なアドバイスをいくつか紹介しましょう。
1.優れた事業へ投資する
バフェット氏は、株価の動きには注目せず、優れた事業に投資することを強調しています。同氏は2023年の株主宛て書簡の中で、「我々が上場企業の株式を保有しているのは、長期的業績に対する期待に基づくものであり、巧みな売買の手段としてではない」と述べました。バフェット氏の考え方は古臭いように思えるかもしれませんが、これは逆張り的な銘柄選択とも言えます。同氏はさらに、自分とパートナーのチャーリー・マンガー氏について、「銘柄を選択しているのではなく、ビジネスを選択している」と述べています。
矛盾しているようですが、個別銘柄に着目しないことが、市場を上回るリターンを得るカギになる可能性があります。実際にバフェット氏は、S&P500指数といった指数に連動するインデックスファンドに投資資金の大半を振り向けるよう繰り返しアドバイスしています。一般的な投資家にとって、銘柄選択を一切行わないことが最善のアプローチだと考えているのです。
このことは、特定の銘柄や市場全体に関して熱狂気味になっている時に特に重要です。特に素人の投資家は、ただ面白そうだからという理由で株式を買うと、痛い目に遭う可能性があります。市場が上昇すればするほど、ファンダメンタルズを確認した上で株式を購入することが必要になります。2022年に株価が急落した時、成功間違いないと思っていた多くの投資家が大打撃を受けました。1986年の書簡の中でバフェット氏は、「強気相場では、事業の業績が低迷していたとしても、その事業の保有者である株主へは大きなリターンがもたらされることがある。これ以上に爽快なことがあるだろうか」とも言っています。
強固な財務基盤と長期的可能性を持つ優れた事業に投資することは、相場が大きく変動した場合に資産を守ってくれるはずです。
2.本源的価値を下回る価格で取引されている株式を購入することは、富の創造に繋がる
バフェット氏は、優れていると自身が認める企業の株式が、その企業の本源的価値を下回る価格で売られている時、株価は驚異的に上昇する可能性があると述べています。同氏はまた、自身の師であるベンジャミン・グレアム氏の言葉を引用して、「市場は短期的には投票機だが、長期的には計量器である」と述べています。つまり、時間が経つにつれて、市場はその銘柄が持つ重みを認識し、相応の価格を付けるようになるということです。
バフェット氏は、自身が率いるバークシャー・ハサウェイがある期間、株式を購入しなかったのは、ポジションを持つに値するほど割安な銘柄が見当たらなかったからだと述べています。
強気相場では、株式の価値が肥大化される傾向があるため、株式価値を明確に評価するのが難しくなることがあります。しかし、企業の本源的価値を念頭に置くことで、投資家はより明確に考えることができるようになります。バフェット氏は企業の本源的価値について、「事業が継続する残りの期間に生み出される現金の現在価値」と定義しています。とはいえ、それを判断するのはそう単純なことではなく、客観的な数字で表せるものでもないと認めています。資本やインフラといった有形のものばかりではありませんが、まずはそれがスタートです。投資先を考える際には、ブランド力、つまり再販価値があるかどうかや、利益創出力といった要素について考えることが重要です。
その上で、バフェット氏がしばしば強調する、優れた事業を定義する4つの重要要素、すなわち、強固なキャッシュポジション、持続的な競争優位性、優れた経営、多様な収益源について検討するのです。
これらの要素について慎重に検討する必要がありますが、忘れてならないのは、株式を購入するということは、過小評価されている優れた事業の長期的な株価上昇を期待することであって、次の注目株や強気相場を期待することではないということです。
免責事項と開示事項 記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。元記事の筆者Jennifer Saibilは、記載されているどの企業の株式も保有していません。モトリーフール米国本社はバークシャー・ハサウェイの株式を保有し、推奨しています。モトリーフールは情報開示方針を定めています。