トルコリラ「エルドアン安」相場

5月14日に行われたトルコ大統領選挙の第1回目の投票前までは、世論調査で野党統一候補のクルチダルオール氏が優勢と見られていた。深刻なインフレ、そして2月に起こった大地震への政府対応への不満などから、ついにエルドアン長期政権が交代する可能性が注目されていたが、実際に大統領選挙が始まってからは形勢が逆転に向かったようだ。

エルドアン大統領の勝利が有力視されている主な理由は以下の通り。
1)14日の開票結果では、エルドアン氏が49.5%で、野党統一候補のクルチダルオール氏の44.9%を上回った。
2) 14日の投票で敗北し動向が注目されていたオアン氏が22日、エルドアン支持を表明した。

この大統領選挙の結果は、かねてよりトルコリラ相場に大きく影響すると見られてきた。というのも、トルコリラは長期下落相場が続いてきたが、これはエルドアン大統領の独特な経済政策が主因と見られてきたからだ。

トルコ経済の最大の問題は、一時消費者物価が前年比で80%も上昇した記録的なインフレだろう(図表1参照)。インフレとはモノの価値が高くなることなので、相対的に通貨価値の下落をもたらす。そんなインフレ対策の基本は、需要を抑制する利上げというのが経済学の常識だが、エルドアン大統領の持論は真逆の「インフレ対策は利下げ」というもの(図表2参照)。

【図表1】トルコの消費者物価前年比上昇率の推移(2020年~)
出所:マネックス証券「経済指標カレンダー」
【図表2】トルコと米国の政策金利の推移(2015年~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

通貨価値が下落するインフレ局面において、金利も下げるとなると通貨の下落が止まらなくなるのは当然だろう。そして通貨安は輸入物価の上昇を通じ、さらなるインフレ悪化をもたらす。こうしてトルコリラは対円で見ても下落相場は2014年からすでに約9年も続き、インフレ→トルコリラ安の悪循環に歯止めがかからない状況となっていた。

トルコリラ安の最大の元凶と見られているエルドアン大統領が交代となると、インフレ対策の利上げが行われることで、トルコリラ/円は反発に向かうと見られていた。上述のように、2014年から続くトルコリラ/円の下落トレンドの中で、基本的に「超えられない壁」となっていたのが52週MA(移動平均線)で、足元のそれは7.5円程度。トルコリラの「エルドアン安」相場の転換は、この7.5円程度を上回るかが1つの目安になっていたが、エルドアン政権継続となるとそれは難しいだろう(図表3参照)。

【図表3】トルコリラ/円と52週MA(2014年~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成